北九州市の埋蔵文化財センターを八幡市民会館に移転し、解体後に跡地を売却する「埋文センター移転事業」。市は昨年12月11日から1月11日まで市民意見(パブリックコメント)を募集しました。

 

北九州市の2つの文化施設の存廃と用途変更が問われるこの事業に、一人でも多くの方々に関心をもってもらおうと市民意見募集に応募された方の意見を連載で紹介しています。

 

今回は、埋文センターの八幡市民会館への移転は城野遺跡と深く関わっていることから、「城野遺跡公園を実現する会」の顧問の大学名誉教授が提出された意見(提言)の紹介です。なお、この意見(提言)では、現在整備工事中の「城野遺跡公園(史跡広場)」についても最低限のこととして提言されています。

 

弥生時代後期(1800年前/邪馬台国時代)の城野遺跡はほぼ全域が開発により消滅しましたが、2019年3月、方形周溝墓が「城野遺跡から見つかった九州2例目の玉作り工房の存在も含めて、邪馬台国と同年代の『クニ』の実態を知るうえで重要」と評価され、福岡県の史跡に指定されました。

 

現在、唯一現地が残った方形周溝墓が「城野遺跡公園」として保存活用されることとなり、整備工事が進んでいますが、この方形周溝墓で見つかった水銀朱(中国産)がたっぷりと塗られた幼児の箱式石棺が、現在の埋文センターに移築され展示されています。

 

埋文センターを八幡市民会館に移転する「埋文センター移転事業」は、この幼児の箱式石棺を城野遺跡の方形周溝墓からますます遠ざけることであり、県指定史跡にもなった城野遺跡の保存活用のあり方にも関わる重大な問題なのです。

 

せめて西エリア全域を遺跡公園にできれば、ガイダンス施設を設置することができ、幼児の箱式石棺も墳墓のすぐ近くに展示することができたのですが…。

 

※「埋蔵文化財センター移転事業」の関係資料を下記に添付しています。ご参照ください。

 

■動画 城野遺跡発掘調査記録 “朱塗り石棺の謎”(動画14分)

発掘調査当時の感動がよみがえります。ぜひご覧ください。

ここをクリックしてください。

https://www.youtube.com/watch?v=QxvY4FBnXq0.

 

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<市民意見(パブリックコメント)>

 

提言書

城野遺跡と埋文センター移転については、リンクする問題と考えていますので、以下、提言いたします。

 

Ⅰ 埋蔵文化財センターの旧八幡市民会館移転について

結果的に、方形周溝墓の「周溝部分」と「石棺」とを、遠く隔てることになるので基本的には埋蔵文化財センターの旧八幡市民会館移転は反対です。

本来であれば、「石棺」は現地保存が原則。できれば、計画されている「史跡広場の施設」内に設置すべきものです。その前提で、新施設の建設を検討すべきと考えます。それが叶わない場合は、近隣に、しかるべき(保管)施設を造るべきです。なるべくなら、小倉の地に置いて欲しいと思います。

 

Ⅱ 県指定文化財(史跡)城野遺跡の、史跡広場の施設について

史跡広場については、以下の事柄を明示することが必要です。

すなわち、

a. 県指定史跡であることを示す標柱を作ること(現地に設置)

b. 城野遺跡の全体(方形周溝墓+集落)を示す模型or看板(現地に設置)

c.遺跡全体がわかる解説文(現地に設置)

d. 新しい施設建設にあたっては、コンクリートや新建材を極力控えること(防災上、必要である場合を除く)

本来、存在しない「階段」を設置する前に、これらの設置を検討することが必要と考えます。

 

以上、提言します。

 

(神奈川県川崎市在住 70代 男性 「城野遺跡公園を実現する会」顧問)

 

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<埋文センター移転事業、市民意見募集の参考資料> ※市のホームページより

 

●「市民意見提出手続(パブリックコメント制度)」について

市民意見提出手続とは - 北九州市 (kitakyushu.lg.jp)

※「市が基本的な計画等を立案する過程において、あらかじめその案を広く市民に公表し、これに対して提出された意見を考慮して基本的な計画等の決定を行うとともに、提出された意見の概要とこれに対する考え方等を公表する手続」(上記添付のページより)

 

●埋文センター基本計画-旧八幡市民会館の活用-(2019年9月決定)

000855914.pdf (kitakyushu.lg.jp)

※「埋文センター移転事業」は、この基本計画に基づきすすめられています。

 

●「公共事業評価に関する検討会議の議事録」(2020年11月25日開催)000909697.pdf (kitakyushu.lg.jp) 

※検討会議(50分)では、短い時間ですが構成員の質問や意見には厳しい指摘も多くあります。にもかかわらず、最終的に「異議なし」と結論付けられたことがとても不可解です。

 

●「埋文センター移転事業」公共事業 事業評価2(2020年12月8日)

000909295.pdf (kitakyushu.lg.jp)

※この事業について、12月11日~1月12日まで市民意見が募集されました。

 

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<城野遺跡の関係資料>

 

■2017年12月までの足立山をのぞむ丘陵地にひろがる城野遺跡

 

 

■城野遺跡の写真パネルの一部(城野遺跡と方形周溝墓の説明として)

 

 

 

 

 

 

 

■現在の埋蔵文化財センターに展示されている幼児の箱式石棺

熱心に説明を聞きながら1800年前の箱式石棺を見入る見学者のみなさん。

 

 

■「埋文センター移転事業」後のイメージ図

展示スペースは八幡市民会館のホワイエ。大きな柱や階段は村野藤吾氏設計の文化的芸術的価値が光るものですが、埋蔵文化財の展示室としてはいびつなスペースになっており、展示に様々な制約がありそうです。さて、城野遺跡の幼児の箱式石棺はどこ?

 

 

■ちなみに、現在の「城野遺跡公園」の様子(2021年1月14日パノラマ撮影)。

県指定の史跡整備であるにもかかわらず、県に計画変更届けをせずに階段の設置工事に着手したため、2020年10月から中断しています。ブルーシートの向こう側までが方形周溝墓の部分です。

1月8日の文化企画課との懇談によると、市は当会の抗議や要望に耳を傾けることなく、「城野遺跡公園」の一番大切な方形周溝墓は、階段の設置工事を再開し、全面を平らなアスファルトで復元(?)整備するとのこと。方形周溝墓ギリギリの面積しかないため、10階建て32mのマンションで足立山の全貌は見えなくなりました。後世に誇れる史跡整備になるのかとても心配です!

 

 

■上記写真の反対側(道路側)から撮った写真(2021年1月14日撮影)

城野遺跡の説明の看板(右端の1枚)がありますが・・・。