ショウジョウバエの♂と♀の性行動の差は、10万個の脳細胞のうちのわずか20個程度の違いによるものだとわかったそうです。


人間など哺乳類でどうなっているかの研究はまだまだ先の話でしょうが、人間の場合も同性愛になる原因はごくわずかな脳細胞の違いかもしれませんね。



雄の求愛などの性行動 脳の“司令塔”を特定
9月15日12時43分配信 産経新聞

 雌への求愛など、性行動を“男らしく”している脳細胞を、東北大大学院と北海道教育大の研究グループがショウジョウバエで特定した。約10万個の脳細胞のうち特定の場所に形成される20個ほどの「雄型細胞群」が雄の性行動の司令塔となっていた。11日付の米科学誌「ニューロン」に発表した。
 東北大大学院生命科学研究科の山元大輔教授らは、脳細胞のごく一部を雄型に性転換させた雌のキイロショウジョウバエを205匹作り、性行動を調べた。
 1匹ずつ正常な雌と“お見合い”させると、205匹中16匹が雄特有の求愛行動を起こした。性転換した脳の領域を調べると約20個の脳細胞がほぼ共通していた。他の細胞が「完全な雌」でも、この20個の雄型細胞群を組み込んだショウジョウバエは雄としてふるまった。
 これまでの研究で、ショウジョウバエの性決定にかかわる2つの遺伝子が分かっており、連携して雄型の神経回路と雌型の神経回路を作り分けているという。今回の成果で、脳細胞の生物学的な違いが行動の性差のもとになっていることが分かった。研究グループの北海道教育大の木村賢一教授は、「ショウジョウバエで見つかった脳細胞の性差は、ヒトの意識や行動に現れる男女差を解明し、客観的に理解するうえでも大きなヒントになるだろう」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080915-00000918-san-soci
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/178505/



より詳しい解説(東北大学脳科学グローバルCOE)
http://ja.sendaibrain.org/upload/080911Neuron.pdf



元論文

フルートレスとダブルセックスは求愛を引き起こす力のある雄特異的ニューロンの形成に共同して関わる

"Fruitless and Doublesex Coordinate to Generate Male-Specific Neurons that Can Initiate Courtship", Ken-ichi Kimura, Tomoaki Hachiya, Masayuki Koganezawa, Tatsunori Tazawa, Daisuke Yamamoto, Neuron, 59, 759-769 (2008)
http://www.neuron.org/content/article/abstract?uid=PIIS089662730800500X




上の「より詳しい解説」を読んでもらえればよいのですが、読めない方のためにまとめておきます。


◆以前の研究および既知の事項

オスのショウジョウバエがメスに興味を示さなくなる突然変異体Satori(サトリ)のオスはオスに興味を示す(同性愛行動をとる)ことがわかりました。

その原因になっているのがFruitless(フルートレス)遺伝子の異常です。

(Fruitless(フルートレス)とは、「子供が出来ない、無意味な」という意味か?)


Fruitless遺伝子によってオスとメスの脳の神経細胞(ニューロン)に差ができることが、この研究グループによって先行論文で発表されました(ネイチャー誌、一番下に示してあります)。


Doublesex(ダブルセックス)というのもショウジョウバエの遺伝子で、内外生殖器や外観の性、さらにごく一部の神経系の性を決定する働きを持っています。

オスとメスとでは別のたんぱく質をつくります。(←この理由がわかりません。ご存知の方、教えてください。)



◆今回の論文

10万個のショウジョウバエの脳細胞のうち、数十個の細胞だけに性転換を引き起こし、その性転換をおこした脳細胞のみが緑色蛍光タンパク質(GFP)を作るように遺伝子工学的な操作を行った性モザイクをつくりました。(←この赤字の部分がすごいと思います。)

この性モザイクのメスのうち、オスと同じ性行動をとったもののみに共通していたのがP1細胞群と名付けられた20個ほどの細胞群でした。

Doublesex遺伝子がつくる雌型Doublesexタンパク質はP1細胞群に細胞死(アポトーシス)を起こさせるため、本来のメスにはP1細胞群はありません。

また、Fruitless遺伝子がつくるFruitlessたんぱく質はP1細胞群を形成するのに必要です。

P1細胞群はこの2つの遺伝子によってコントロールされています。



まとめると

Fruitlessあり、雄型Doublesex→P1ができる→オスの行動
Fruitlessあり、雌型Doublesex→P1が細胞死→メスの行動
Fruitlessなし、雄型Doublesex→P1ができない→メスの行動

Fruitlessなし、雌型Doublesex→P1ができない→メスの行動

ってことかな?



先行論文
Fruitlessはショウジョウバエの脳において性差のある神経回路をつくる
"Fruitless specifies sexually dimorphic neural circuitry in the Drosophila brain", Ken-Ichi Kimura, Manabu Ote, Tatsunori Tazawa, Daisuke Yamamoto, Nature, 438, 229-233 (2005)

doi:10.1038/nature04229
http://www.nature.com/nature/journal/v438/n7065/full/nature04229.html