三井物産のカーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチュート(CNRI)への就職を考えていなかったわけでもない僕としては、ちょっと気になるニュースです。
その他のナノテク材料(フラーレンとか白金ナノコロイドとか)の安全性もわかっていませんが、カーボンナノチューブに関しては予想はしていたことで、あぁ、やっぱりなという感じが強いです。
カーボンナノチューブを使った製品が実用化されるとしても、カーボンナノチューブはごく微量しか含まれないだろうし、きちんとパック(?)された状態でしょうから、実用上の問題は少ないと思います。
恐らく、このニュースによって研究が縮小するということも無いと思いますが、日常的に使っている研究者の方はちょっと心配ですね。
ナノチューブで石綿と同症状=マウス実験で確認-科学誌
5月21日16時1分配信 時事通信
【ロサンゼルス20日時事】新技術に関する科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」(電子版)は20日、未来の新素材として脚光を浴びているカーボンナノチューブ(CNT)について、人が吸い込んだ場合の発がん物質として知られるアスベスト(石綿)と同様、肺に中皮腫を引き起こす可能性があると警告する調査結果を公表した。
実験で、細長いらせん構造を持つCNTを投与されたマウスに、同じように細長い構造の石綿繊維を投与したのと同じような症状が表れたという。短い構造のCNTでは症状は見られなかった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080521-00000093-jij-int
「カーボンナノチューブでも中皮腫」――アスベスト同様との論文
2008年05月21日 08時14分 更新
ナノ素材として期待がかかるカーボンナノチューブだが、ある種のチューブを吸引した場合、アスベスト(石綿)と同様に作用し、悪性中皮腫を引き起こす可能性がある――英・米の研究者らが5月20日、このような研究結果を発表した。
長繊維状のカーボンナノチューブは、構造がアスベストファイバーの構造と似ているだけでなく、その作用も酷似しているという結果が出たという。
英エディンバラ大学のケネス・ドナルドソン教授らは、長繊維状と短繊維状のカーボンナノチューブ、長繊維状と短繊維状のアスベストファイバーを、それぞれマウスの腹腔に注入した。その結果、長繊維状のカーボンナノチューブは、長繊維状のアスベストファイバーと同様の作用を示した。長繊維状のアスベストファイバーは肺に深く浸透し、長さがあるために肺の自浄作用で除去することができず、肺がんや悪性中皮腫を引き起こしてしまう。
ただし、大気中のカーボンナノチューブが吸入可能かどうか、吸入された場合肺まで届くかどうかなどは分かっていない。また短繊維状のチューブや湾曲したチューブにはアスベストのような働きは確認できなかった。研究者らは、カーボンナノチューブの安全性について、今後さらに研究が必要だとしている。
約20年前に発見されたカーボンナノチューブは、プラスチックのように軽量で鋼鉄のように強靭なことから、新薬や電池、エレクトロニクスなどさまざまな分野で活用されている。しかし発見当初から、ナノチューブの安全性を懸念する声があった。Chemical & Engineering Newsによると、カーボンナノチューブ市場は向こう4~7年で、20億ドル規模に達する見通しという。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0805/21/news028.html
「研究」はされていますが、まだ「活用」される段階までは到ってないと思いますよ。
元論文
"Carbon nanotubes introduced into the abdominal cavity of mice show asbestos-like pathogenicity in a pilot study," Craig A. Poland, Rodger Duffin, Ian Kinloch, Andrew Maynard, William A. H. Wallace, Anthony Seaton, Vicki Stone, Simon Brown, William MacNee, Ken Donaldson, Nature Nanotechnology, Published online: 20 May 2008 | doi:10.1038/nnano.2008.111
http://www.nature.com/nnano/journal/vaop/ncurrent/abs/nnano.2008.111.html
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ナノ素材の毒性を示す新たな実験結果――ナノテクへの懸念が増大
Stephen Leahy 2004年08月12日
ナノ粒子にさらされた魚の脳に損傷が確認されたとする研究が3月末に発表され、誕生して間もないナノテク業界はいっせいに縮みあがった。ナノテク批判派は、喧伝されている数十億ドル規模のナノ業界には誰も触れたがらない暗い一面があると指摘する。
「毒性を示す研究結果があとどれぐらい出てきたら、規制当局は介入してくれるのだろうか」と、環境保護団体『ETCグループ』(カナダ、マニトバ州ウィニペグ)のキャシー・ジョー・ウェッター氏は問いかける。ETCなどの環境保護団体は、ナノ粒子の商業生産を一時停止するよう求めている。
ナノテク利用製品が特別な規制を受けていない理由として、ナノテクノロジーが環境や健康へ及ぼす影響についてほとんどわかっていないことも挙げられると、ライス大学(テキサス州ヒューストン)の生物環境ナノテクノロジー・センター(CBEN)の責任者ケビン・オースマン博士は述べる。
(略)
また、ナノ粒子はきわめて小さいため、細胞壁を通過して、生物のDNAが入っている細胞核にまで侵入しうる。さらに二酸化チタンのナノ粒子の場合、バクテリアを殺す可能性もある。これは病院では喜ばしい話だが、自然環境では歓迎されることではない。自然環境ではバクテリアが重要な役割を担っており、とくに肥沃な土壌を維持するためにきわめて重要な存在だからだ。
(略)
ナノテクの影響を判断するのは容易なことではない。ナノ素材の特性はまだ明確になっていないからだ。通常は生物学的に不活性である金のような物質も、ナノサイズになると反応性が強まり、生物学的作用を阻害する可能性が高くなる。
そのうえ、これほど小さな粒子は探し出すこと自体が難しいという問題がある、とビューカー博士は話す。ナノ粒子を確認できるほど強力な顕微鏡(日本語版記事)はまだ少ない。
http://wiredvision.jp/archives/200408/2004081204.html