ふと口を吐いて「この服、ちゃんと着れてる?」てな言葉が飛び出したのですな。刹那、「あいやあ、ら抜きを使ってしまった…」と独り言ちてしまった次第でありますよ。
予て(といってもはや何十年からにもなりましょうかね)「ら抜き言葉」の舌足らず感がどうしても気になってしまっており、先のひと言でも、照れ隠し的に問わず語りで「着られてる、か」と言い直したりする抵抗力は今でも持ち合わせておるところながら、世の中的にはすでにウイルスのように「ら抜きパンデミック」は定着してしまっておるようす。てなことを言っている口にもしっかり蔓延の手は及んでいたといえましょうか。
ともすると、もはや「ら抜き言葉って何?」てなことにもなってきているかもしれません(敢えてここで説明を試みようともおもいませんです、はい)し、無駄な抵抗を継続するのも単に時代の流れに逆らっているだけかもしれませんですね。言葉は常に移り変わっていくものでもありますし…。
と、そんなことを思い巡らしましたのも、今朝の新聞コラムで「ぎなた読み」という言葉が出てきまして、「ああ、そういう言い方をするのであったか」と(今さらながら)思ったのでありまして。文を読む際に区切りを間違えて、意味を取り違えることを指して「ぎなた読み」とは、この言葉自体は知らなかったもので(恥ずかしながら)。
「弁慶がなぎなたを持って」という一文を、本来「弁慶が、なぎなたを持って」と読むべきところを「弁慶がな、ぎなたを持って」と読むように、句切りを誤って読むことに由来する。
Wikipediaに曰く「ぎなた読み」と呼ばれる由来はかようなことなわけで、昔から聞くことながら無理のある例ではなかろうかと。むしろ、他の例として挙がっていた「ここではきものをぬいでください」の方が取り違えの可能性のある例ですかね。曰く「ここで履き物を脱いでください」と読むのか、「ここで着物を脱いでください」と読むのか。
まあ、この「ぎなた読み」に少々引っ掛かりましたのはつい先日、夕方のニューズ番組の中で、昨今は同じ言い回しが世代間で異なる受け止め方になる事例が思い出されたからでもありまして。ひとつには「7時10分前集合」と聞いたとき、あなたなら何時に集合場所に行きますか?というものでして。
そも、7時10分前集合と聞いて、つまりは6時50分に集合すればいいのだあねと考えるのは、今では必ずしも共通認識ではないようなのですねえ。特に若い世代の間で「7時10分前集合」と聞くと「7時10分の少し前に行けばいいのね」と受け止められているのであると、いやはやです。古い世代はというか、旧来の受け止め方では当たり前のように「7時の10分前に集まるのだね」と考えたわけですが…。
ただ、これはよくよく考えてみる(までもないのですけれど)と、状況設定が舌足らずに過ぎるような。だいたい集まる時間を決める際には集まってその後に何かする理由があるでしょうから、例えば映画を見るとして上映開始が〇時だからその〇〇分前とかいうように。先に決まった時間があるのに先立ってと思えば、先の事例では7時に映画が始まるとしてその10分前とは自明になりますし、7時10分の少しまでは映画が始まってしまっているわけですしね。
もっとも、時間の決まった何かが控えていなくても待ち合わせをすることはありましょうけれど、その場合には7時10分という微妙な時間で待ち合わせることってあるのでしょうか。何事もデジタル化しているご時世だけに無いとはいえませんけれど、昭和な者になっては中途半端感ある時間設定をされると「なにそれ?!」という気がしてしまうところですが…。
もひとつ、先のニュース番組にで紹介されていたの方はもう「ぎなた読み」とは全く関わりないことになりますけれど、「1000円弱」とはいくらぐらい?という認識の仕方でありましたよ。
これも当然の受け止め方として、1000円に少々足りない額、つまり900円台後半くらいかなと想像するわけですが、どうやら異なる受け止め方が存在する。しかも、これには先の時間の例よりも年代間のばらつきではない個人差があるようで。
ある人たちの答えて曰く、「1200円くらいかな。1500円はいかないでしょう」と。こう考えるロジックはどうやら「1000円プラス若干の金額」ということにあるようで。どう発想するとそういう理屈に至るのかが、個人的には想像しかねるところながら、街頭でかように答える人たちが確かにいるという現実に、「ふ~ん」てなものでありましたですよ。
「ら抜き」に限らず、インターネット上の書き言葉、TVなどを通じて聞こえてくる話し言葉のあれこれに、都度都度「む?!」と思うことが多く、それをひとつひとつ挙げることはしませんが(時折、こぼすことはあります、笑)、その数はだんだんだんだん増えていっている。そのたびに「!」と感じていては、ストレスが溜まる一方なので、近ごろはできるだけスルーするようにしてますが、たまには今回のようなこぼしをしておかないと不健全なことにもなりかねない。ま、きわめて個人的なことと言わざるを得ない昨今なわけですが…(苦笑)。