METライブで今度はドニゼッティの「ロベルト・デヴェリュー」を見てきました。どうも音的には「デヴェルー」とか「デヴルー」とかのが適当なような気もしますが、それはともかく、以前やはりMETライブで「マリア・ストゥアルダ」を見、大層感じ入ったものですから(と、単にジョイス・ディドナートがお気に入りなだけかも)ドニゼッティの英国ものとあって出かけたわけでありますよ。
ドニゼッティは英国を舞台にしたオペラをいくつか書いているようですけれど、舞台が英国でありながらも(やむを得ないことながら)タイトルから役名から全てイタリア語にで示されておりますね。なかなかに掴みにくいというか。
だいたい「マリア・ストゥアルダ」もメアリ・スチュアートと言われればイメージできますし、見逃した「アンナ・ボレーナ」がアン・ブーリンのことであったとは思いもよらず…。
で、今回の「ロベルト・デヴェリュー」もエセックス伯ロバートがタイトルロールということになるものの、英国女王エリザベス1世の寵臣(要するに愛人か…)であった人物となればどうしたってエリザベス1世のお話ということにもなっていこうかと。
当時の英国はいまだ後進国の状況であったところが、エリザベスの時代にアルマダ海戦(1588年)でスペイン無敵艦隊を撃破し、一躍(内実はそれほど勇ましいものではなかったようですが)存在感を増すことに。
また「マリア・ストゥアルダ」にも描かれたスコットランドとの問題などもあって、背景はまさに激動の時代なだけに、波乱万丈の物語…となっても不思議のないところかと。
ですが、この「ロベルト・デヴェリュー」でのお話と言いますのが、もっぱらに痴情のもつれに終始するのですなあ。
エリザベッタ(エリザベス)はロベルトを寵愛する。ロベルトは今では友人の妻となっているサラを恋慕する。サラはエリザベスの侍女であって、エリザベスの心情を常に聞かされている。サラの夫であるノッティンガム公はロベルトの親友である。
この中でひたすら疑心暗鬼に苛まれるのはエリザベッタであって、この役を演じたソンドラ・ラドヴァノフスキーも幕間のインタビューでこんなことを言ってたですね。「(全体の)90%は怒っている」と(笑)。
まあ、見る側の受け止め方には個人差がありましょうけれど、「いかようにも描けよう話をこの要素だけでまとめてしまうのか…」と思ったのでありまして。
ですが、メトロポリタン歌劇場を埋め尽くした観客はやんやの喝采なのですな。これはもう見るところ(聴きどころか?)が違うとしか言いようがないわけです。
オペラを見ると言っても聴くこととはセットですし、むしろ聴くことの方こそ比重が高いということでもあろうかと。それがベルカント・オペラともなれば、お目当ては歌唱そのものであって、それをこそ楽しみに劇場へ足を運んでいるのでもありましょう。
そんなふうに言わばストーリーは二の次にしても「ぶらぁぼ!」と喝采を送るのがほとんどの観客であったとして、個人的にはやっぱりストーリーが気になる。
まあ、この辺りが「オペラを見ようか聴こうか…」と言った理由でもあるわけですが、先日の「蝶々夫人」とは別の意味で「悩ましい…」と思ってしまったのでありました。