先頃「サンダーバード音楽集」なるCDを買おうかと思うも止めたという話をしたですが、同じタイミングで「どうしよっかな」と少々迷った結果買ってしまったというCDもあり。こちらの一枚でございます。
写真でいちばん目を引くのは大写しされた猫くんではなかろうかと。実は買おうかどうしようかと迷ったと言いますのも、この写真の故でありまして。嫌いではないけれど特段好きなわけでもない猫のカバー写真を、このCDを取り出すたびに目にするというのは「どうもな…」と思ったわけです。
ところで、このCDはいったいどのような内容であるのかですけれど、かの猫くんの見上げているものがフルートであろうとはお気付きになるところかと。で、両者の中間には「CHATS」、「THE FLUTE QUARTET」との文字が。つまりはザ・フルートカルテットというアンサンブルが「Chats」即ち「猫」の標題を持つ曲を含んで録音したものでありました。
ちなみにフルートカルテットはフルート四重奏の意になりますが、しばらく前のNHK「らららクラシック」だったでしょうか、○○四重奏と言った場合、ここではまんまフルート四重奏ということにしますけれど、フルートが4本で演奏する曲とは限らないことに触れていましたですね。
例えば、先日エマニュエル・パユの演奏で聴いてきたモーツァルトのフルート四重奏曲は、フルート×1、ヴァイオリン×1、ヴィオラ×1、チェロ×1という四種類の楽器で演奏する曲として作られているわけで。
ですが、あくまでフルート4本で演奏するとは「限らない」というからにはフルート4本での演奏もまたフルート四重奏と言い、演奏機会が無いわけではないのがいささかややこしいところ。
クラシック系の曲に聴き馴染みのある方にはなんとなあくこの住み分けを既存のものとしてすっと受け入れてしまっているやに思いますが、こうした点ももしかしたらクラシック系の音楽にいささかの敷居を設けていたりするのかも。ま、楽譜を見ればちゃあんと「フルート、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための」と書かれていることが多いのですけれどね。
と余談が長引きましたけれど、文字通りにフルート4本で演奏されたこのCDを聴いてみましたところ、良いですなあ!透明感たっぷりで爽やかに流れゆくところ、そして時に含みの多いアンニュイな表現、いずれもがこれからの季節の気分転換に、はたまたもの思いに打ってつけでもあるような。
タイトル曲とされたベルトミュー作曲による「猫」は「ペルシャン・ブルー」、「ピューマ」、「シャム」、「山猫」、「ペルシャ猫」という5匹ならぬ5曲構成。フランス(作曲者がフランスの人)ではピューマや山猫も「猫」と言ってしまうの?と思ったことはともかく、猫にも個性の違いは大きくあるのでしょう。種類の違いにマッチしているかまでは個人的には分からないところながら、あれこれの猫のしぐさやら動きが想像できてはくるところでありますね。
で、その後にはフルート四重奏用オリジナル作品を挟んで、後半は本来的にはオーケストラで演奏する曲などのアレンジもの。限られた音域と音色でどうこなし、どう味付けているかが聴きものなわけでして、時にアルト・フルートやバス・フルート、はたまたピッコロを加えたりしつつ、同質な音による深みに広がりを持たせておりました。
最後に収録されているワーグナーの「ローエングリン」第三幕への前奏曲などは、普通の演奏が金管楽器の面目躍如たる活躍の場である勇壮さが身上なだけにフルート4本でどうなることやらと思いましたですが、これもあり!だと。
アレンジものはともするとテクニックの披瀝に流れてしまって、CDやレコードという録音媒体で何度も聴くには辛くなるときがありますけれど、そういうこともなく何度でも聴いて心地よくなれそうな感じの一枚、これは「買い」で成功したと思っておりますよ。