宮城県石巻市、旧北上川の中洲に佇む旧石巻正ハリストス正教会教会堂に立ち寄って震災の記憶と、もしかしたら石巻に残る?キリスト教の記憶といったものに思いを馳せたわけですが、教会堂のすぐ傍らには近未来の建物とでも言うべき異形の建築物がありまして、思いは全く別のところへ飛ぶことに。
「石ノ森萬画館」。宮城県登米郡中田町(現登米市)生まれで石巻にも所縁の深い漫画家・石ノ森章太郎の作品を集めたマンガミュージアムということで、入口前には石ノ森が創造した数々のキャラクター像が並んで、さながら昭和のデパートの屋上遊園地にでも来たかのようでありますよ。
ちなみに館名にあります「漫画」ならぬ「萬画」と言う言葉ですけれど、このあたりのこだわりについて、同館HPにはこのように。
石ノ森先生は「漫画」を「萬画」と表現しました。 これは、1989年に石ノ森先生が提唱した「萬画宣言」によるものです。 「萬画宣言」の中で石ノ森先生は、漫画はあらゆるものを表現できる無限の可能性を秘めたメディアであることから、もはや「漫画」ではなく万物を表現できる「萬画」であると提唱しました。
ということで、作品にはギャグ漫画も時代ものもある石ノ森ながら、作品数も多く圧倒的に人気の高いのはSF系、それも人造人間的なものになりましょうか。年代によって思い出す作品は異なるにせよ、個人的にはやはり『サイボーグ009』でありますなあ。
せっかくですので、ここで主要登場人物を振り返っておくとしますか(場合によってはスルーしてくださいまし)。
- 001 イワン・ウィスキー(ロシア・モスクワ)
ロシア生まれの超能力ベビィだ。もちろん改造(というよりは、ある“刺激”)したのは〈脳〉で、人間が持っていたその能力を”覚醒”し”成長”させたのだ。 - 002 ジェット・リンク(アメリカ・ニューヨーク)
ニューヨーク(アメリカ)のダウンタウンで徒党を組んでケンカなどに明け暮れる非行少年だった。黒い幽霊団(ブラックゴースト)に改造され空中を自在に飛べる。 - 003 フランソワーズ・アルヌール(フランス・パリ)
バレリーナを夢見ていた、フランスの少女だった。改造は”視覚”と”聴覚”に施された。人の何倍も見える、聴こえる、という能力を持つ。 - 004 アルベルト・ハインリヒ(ドイツ・ベルリン)
ドイツ生まれ。全身葺きの男。恋人を死なせてしまったという暗い過去を持つ。クールで、戦うことの虚しさを人一倍知る男だけに、ニヒルに世の中を見ざるを得ない。 - 005 ジェロニモ・ジュニア(アメリカ・西部)
ネイティヴ・アメリカン。全身の皮膚、筋肉、組織の改造で、まさに”アイアンマン”となった巨人である。無口、自然に宿る精霊を感じることが出来る。 - 006 張々湖(ちゃんちゃんこ)(中国・広東)食いしんぼうで臆病者。大人(たいじん)と呼ばれるほど心が広い。のどの奥に熱線放射装置を備え、3,000度の火炎を口からはく。
- 007 グレート・ブリテン(イギリス・ロンドン)
イギリスはロンドンで、シェークスピアの役者を目指していたのだが…。改造による”変身”能力は、役者冥利に尽きる、という歓びと、自我の喪失という悩みも与えた。 - 008 ピュンマ(アフリカ)
アフリカ生まれの黒人。”人魚”である。水中用サイボーグで1万メートルの深海でも活動できる特製の人口肺を備えている。またアフリカで密猟取締官を行い、独立運動の活動家でもある。 - 009 島村ジョー(日本)
日本人の母と外国人の父の間に生まれた混血児。ゼロゼロナンバーの中では最も完成度が高いサイボーグ。優れた改造能力は、”加速”である。奥歯の横に付いている加速スイッチを入れるとマッハ3のスピードで走ることができる。 - アイザック・ギルモア
生体工学者。黒い幽霊団(ブラックゴースト)の”改造・科学者・グループ”の一員だったが、人間兵器を造る事の罪深さに気付いて、9人と謀り、脱出。以後、彼らの良き相談相手となる。
というのが、1964年に少年漫画誌(最初は『週刊少年キング』だったのですなあ…)に連載の始まったオリジナル・キャラクターたちであると。国際色豊かな反面、当時の日本人の受け止め方によるといったらいいのでしょうか、あまりにステレオタイプなキャラクター設定は今では問題ありとされるやも。特に、005、006、008あたりが矢面にたたされそうで。
そういう面もある一方で、それぞれの人物にはさまざまな苦悩の背景が設定されていたのですなあ。果たして少年漫画雑誌の読者にどれほど伝わったことかと思うと、昭和のひと頃まで漫画はひたすらに子どもの読み物(かつ悪影響を与えかねないもの)いったふうにしか見られていなかっただけに、石ノ森の発想を生かすには追い付いていない時代だったのかもしれませんですね。
先に、個人的にはやっぱり『サイボーグ009』と言いましたですが、実際、作品に触れたのは1968年にTVアニメ化されたもので、007が原作と異なる子どもキャラになって006と掛け合い漫才をするような形になっていたのもいかにも子ども向けを意識した結果だったのであろうなあと今さらながら。ただ、そういう方向性で推移したからこそ、子ども向けシリーズとしては他の石ノ森・人造人間作品は(手を変え品を変え)長く続くことにもなったのでしょうけれどね。
そんな作品の代表が『仮面ライダー』シリーズということになろうかと思うわけですが、『仮面ライダー』とそのほかの作品につきましては次回にということで。年代的に作品にぴったり来る世代ではありませんので、さほど長い話にはならないものと思いますが(笑)。