宮城県慶長使節船ミュージアムにたどり着いてここまで、高みから見下ろすばかりであったサン・ファン・バウティスタ号ですけれど、ようやっと屋外広場に出て復元船を見上げることに。
かつては原寸大で再現されていたものが、震災被害を経て結局のところ1/4スケールの再現(船長14m、高さ13m)に留まることになったとは何度も触れておりますとおり。それでも「そこそこ大きいか…」とも思ったりはしますですが、左隣に横たわる丸太状のものが本来のメインマストだったといいますから、どれほど大きかったことか。返す返すも原寸大を見られなかったことの残念さが募ってきてしまいますなあ。
ちと、出帆を見送るイメージで後らかも眺めやります。この船が「伊達の黒船」とも呼ばれたということも先に触れたですが、歴史上いわゆる「黒船」として有名なのはベリーの蒸気船艦隊でしょうけれど、そも日本人が南蛮人と接触するようになって来航したポルトガルの船自体、黒船と呼ばれていたのであると。防水対策で船体に松やにを塗りこめ、黒く見えたことから黒船。その点でも、サン・ファン・バウティスタ号が西洋の造船術をそのまま取り入れて造られたことが窺えますですね。
てなわけで細部にまで再現性にはこだわっている復元船なのですので、船を飾る詳細も考証済みかと思いますが、全体像からすれば間違いなしに西洋帆船でありながら、やおら甲板上に獅子頭の据えものがあったりして、妙な和洋折衷感を醸していたりも。行く手を睨み据えるふたつの獅子頭の間には陣頭指揮を執る支倉常長がもちろん人形で置かれているばかりですけれど、原寸大であった頃には実際に乗船して船内をつぶさに見て歩くことができたのですよねえ…。その代わりといってはなんですが、「AR(拡張現実)機能により、船内の解説や帆を張った姿をスマートフォンなどで見ることができ」ようになっているのだそうな。ま、スマホを持たない者には縁のない話ですが…。
復元船の向こう、西側のオープンエアになった廻廊部分にはかつて原寸大で再現されていた船の部材が並べられていました。やはり何もかも大きいですなあ。
船尾に取り付けられている伊達家の家紋のひとつ、九曜紋の飾りだけでも4mを越えているのですものねえ。これによって、サン・ファン・バウティスタ号の識別が可能であったからか、先にローマ到着時に描かれたことに触れました支倉常長の肖像画では、背景にある帆船に九曜紋が描かれて、それと判るのだとか。サン・ファン・バウティスタ号自体はメキシコのアカプルコ港に留め置きでしたのにね。
ということで1/4スケールであるにせよ、サン・ファン・バウティスタ号との邂逅を果たして、いささかの満足感を得たところでしたが、やおら長い長いエスカレータを昇り返して、館内にある映像シアターへ。このタイミングで見ておかないと帰りのバスに間に合わなくなるという差し迫った事情もこれありで。
『夢うつつ』と題した22分に及ぶ「伊達政宗・支倉常長の「感情」にせまる物語」を扱って「アニメーションと実写・CGを組み合わせた映像を迫力ある大画面」で見せてくれるシアター映像は、同館を訪ねたならばお見逃しなく。予め滞在予定時間に22分を織り込んでいた方がよいと思いますですよ。