さてと、岐阜県多治見市にまで出かけてまいりまして、まず取り上げておこうと思いますのが(つまりは旅本来の時系列ではないということで)、多治見市モザイクタイルミュージアムでありまして。後ほどご覧いただきますように、相当に異形の建物であるこのミュージアム、何かと紹介される機会も多くありますので知ってはおりましたですが、その存在を改めて意識したのは江戸東京たてもの園で開催された特別展「日本のタイル100年 美と用のあゆみ」だったのですなあ。

 

この時の展示物は常滑のINAXライブミュージアムによるところあり…と同時に多治見のモザイクタイルミュージアムもまた大いに関わっていたわけでして。で、江戸東京たてもの園で展示を見た今年の4月半ば以来、多治見にまで出かけんといけんねと思っていたという。ただ、今年は5月くらいから暑い日があったりして、あれよあれよという間に猛暑、酷暑の日々が到来、分けても多治見という土地は暑さの点では全国的に知られた場所だけに、ぼやぼやしているうちに10月になってようやっとという具合だったのですな。先に和田誠展@刈谷市美術館が今回の旅の「きっかけ(のひとつ)」てな言い方をしましたですが、多治見市モザイクタイルミュージアムの方は今回の旅の「そもそも」がここにあった…ということになりましょうか。

 

ともあれ、多治見駅前からバスに乗って20分ほどでしょうか、笠原という地区に入ってほどなくその異形の建物は忽然と現れるのですな。バス停の方角から見上げるとこんなふうに見えるわけで。

 

施釉磁器モザイクタイル発祥の地にして、全国一の生産量を誇る多治見市笠原町に誕生したモザイクタイルミュージアムは、タイルについての情報が何でも揃い、新たな可能性を生み出すミュージアムです。設計は、独創的な建築で世界的な評価の高い建築家、藤森照信氏。タイルの原料を掘り出す「粘土山」を思わせる外観は、地場産業のシンボルとして、なつかしいのに新鮮な、不思議な印象を与えます。

同館HPにはコンセプトと共に建物の紹介がこのようにしるされておりますが、建物の外観は粘土山のイメージですか。山の輪郭線に沿って植栽があって自然と一体感を演出しておるような。そして、すり鉢状になった芝地を少々下ってエントランスに達するのもまたひとつの演出でしょうかね。

 

 

建物の壁面に、小さくドットを打ったように見えるのはタイル片やら陶器片が嵌め込まれているようですな。これが無いとのっぺらぼうのようになってしまいますからねえ(笑)。外壁自体も藁を混ぜた土壁でしょうか。なにやらグリム童話にでも出てきそうな印象もありますなあ。

 

 

素朴な味わいを感じつつ館内へと足を運んでみますと、エントランスの片隅には全面をタイルに覆い尽くされた物体が!

 

 

この「タイル大好き号」と名付けられた自動車は岐阜県現代陶芸美術館での展覧会の際に製作されたものということでして、174種類のタイルを4万個余り使って(もちろん全て笠原のタイルであると)車体を埋め尽くしたそうな。ご当地のタイル愛が窺える一作とも思えますが、どうもこの写真では色が濁り気味ですので、泥まみれになったパリ=ダカのラリー車のようにも…。

 

 

受付の方から「4階まで上がって順々に下りてこられるのがおすすめです」と教えられたとおり館内を巡ることにしましたですが、当然のごとく長い長い階段が待ち受けておったわけで(別途エレベータもあり)。

 

 

で、たどり着いた先は思い切り外光を取り入れた数多のタイル製品で彩られる空間でありましたよ。なんでも展示されているモザイクタイルは建築設計に携わった藤森照信セレクトであるとか。

 

 

いちばん上の外観写真で、左側側面の上部にまるでいがぐり頭の十円はげのような部分が見えてますけれど、これが開口部だったのですなあ。モザイクタイル片が鈴なりに取り付けられたレース状のオブジェが目を引きますですねえ。

 

 

ということで、このフロアでタイル製品を見、階下ではタイル製造の歴史やら製造法などの解説を目にすることになるわけですが、次回に続く…ということに。ともあれ、建物が異形なだけにたどり着いて建物自体を見上げることで、ひとまず「来たなあ」感が募ってもいましたのでね。中身の話はまた追って。