ちょいとばかり名古屋市美術館に寄り道した関係で、名古屋市営地下鉄の伏見駅で乗り込んだ東山線から千種駅でJR中央本線(中央西線)に乗り換え、いよいよ美濃焼の里を目指すことに。不思議なこと(でもないのかもですが)快速電車で高蔵寺駅(ここはまだ愛知県春日井市)を過ぎますと、それまで平たく広がっていた風景とは一変して山がちとなるのですなあ。次の停車駅は多治見駅(岐阜県になりますね)ということで、このコントラストに尾張と美濃のようすの異なるさまを思い浮かべたりしたものです。そりゃあ、斎藤道三は尾張が欲しかったろうなあと。

 

 

ともあれ岐阜県の、といっても愛知県と隣り合わせている多治見市にやってまいりました。千種からは快速で30分弱ですので十分に名古屋通勤圏でしょうなあ。関東で埼玉県の人を指して「埼玉都民」などと言われるのと同じように、名古屋依存度の高い町なのかもしれません。おそらくはその分、日中と夜の人口差が大きく、また買物でもなんでも名古屋に出てしまう…といった空洞化が町には起こっているかもしれませんですねえ。

 

 

ただ、やきものの町としての自負は駅にもその周辺にも溢れているようで。駅前広場には「陶都多治見」と台座に刻まれ、やきものの壺を掲げた像がど~んと。さりながら(地元の人には見なれていることもあるでしょう)この像に近寄る人もおらず、見向きもされておらないようす。むしろキャッチ―なのは、駅の南北通路で見かけたこちらなのかもしれませんです。

 

 

「多治見へようこそ!」と出迎えているのは、多治見を舞台に陶芸に関わる女子高校生を描いたアニメ『やくならマグカップも』の登場人物たち(といって、こんなアニメがあるのは全く知らなかったのですが…)。なんでも「多治見市の有志や企業によて立ち上げられた、“街を元気にしよう”というプロジェクトの一環として始まった」というのが事の起こりであるとか。果たしてその目論見は奏功したのでありましょうか。しばしの滞在では、判断しかねるところです。

 

 

「町おこし」の助っ人という点では、駅の観光案内所脇で見かけた「うながっぱ」という所謂ゆるキャラもまたと言えましょうか。地元に伝わるかっぱの昔語りと名物のうなぎの合体で、どうしても赤塚不二夫のウナギイヌが思い出されたりしますが、キャラクターデザインをあの!やなせたかしが手掛けたのだとか。高知とつながりある人とは知っているも、多治見と何かしらの関係があるのでしょうかね…。

 

 

観光客向けというより地元の方々に馴染みの商店街と思しき通りには「おりべかっぱ広場」なる場所もありましたなあ。かっぱが帽子を被っているのは、多治見が全国的に知られるほど暑い町だからかも。そう考えると、かっぱにはとっても過酷な町ではなかろうかと。ところで、この場所は先ほどのアニメに絡む聖地めぐりのひとつのポイントであるようですね。織部焼、かっぱ、アニメ…複合的に多治見を盛り上げようという心づもりが見えてくるような。

 

 

とまあ、あれこれの策を施している多治見ですけれど、今回の旅の趣旨から考えれば「やきもの」推しがやや弱い?とも言えませんかね。これまた余り人目を引いてはいないようながら、駅の改札口を出た目の前の壁面には大きな陶板画の作品が飾られていますし。

 

 

さてとこれでようやくやきものに関わる話になっていくのですけれど、その前にもうひとつ、多治見名物というからにはやっぱりうなぎも食しておこうと。

 

 

ちなみにうなぎ専門店でない駅前の食堂で「うな丼」を求めたところ、お重に入って出てきました。専門店で(福田美蘭ではありませんが)松・竹・梅とあったら最も安価な見てくれでもありましょうが、個人的には至って食が細いものですから十二分にいただきました。専門店で大枚はたくまでもなく、おいしくありつけたのは幸いでしたなあ。で、次からは本当にやきもの関係の話が続いていきますです、はい。