このほどは10月の第一週に長崎を訪ねて金曜日に帰宅したのですけれど、なんとまあ、その翌日から3日間は全国的にも知られたお祭り「長崎くんち」が開催されるというタイミングだったのですなあ。長崎歴史文化博物館の中にも、こんな紹介がされておりましたですよ。

 

 

コロナ禍では本格的に開催できなかったところが、2023年は久しぶりに従来規模で行われるとあって長崎市民は色めきたっているようす。本祭は10月7日~9日でしたけれど、その前哨戦ともいうべき?「庭見せ」(本祭を前に山車などを道行く人にお披露目する)という行事が10月3日に行われたようで、この日の夕刻は稲佐山夜景ツアーのバスに乗っておりましたが、そのバスガイドさん曰く「私も(庭見せに)行きたかったですが、仕事が入っていて…」と誠に残念そう。さらには夜景ツアーを終えてから中華街近くで入った居酒屋では、店員さんからやおら「庭見せ、行ってきたんですか?私も行きたかったんですよね」と、問いかけられたりも。町の人たちは、なんと「長崎くんち」が好きなのであるか!と思ったものでありますよ。

 

ところで上に紹介されている今年の出しものですけれど、「長崎くんち」と聞けば即座に思い出す龍の踊り(「じゃおどり」というらしい)が入っておりませんですね。これは「踊町」と呼ばれる参加単位がたくさんある中、それぞれ7年に一度の持ち回りで出しものを繰り出すのだそうな。ですので、いくら有名でも「じゃおどり」は7年に一度きり。次に登場するのは4年後であると、件のバスガイドさんが話しておりました。

 

ということで、件の居酒屋の店員さんに「今年はじゃおどりが無いそうですけど、今年の出しもののメインは何ですかね?」と尋ねてみますと、長崎っ子としてはいずれ劣らぬ7年に一度のお楽しみであるせいか、困った表情をしておりましたが、結局のところは「万屋町の鯨の潮吹きか本石灰町の御朱印船か…」てなことでしたなあ。

 

で、バスガイドさん、居酒屋の店員さんが仕事で見られないと残念がっていた「庭見せ」なる事前行事の翌日(10/4)、午後のひととき、ぶらりと観光通りの近辺をぶらりとしておりますと、やおらとんでもない人だかりに遭遇したのでありますよ。なんとなれば、この日はやはり本祭事前の「人数揃い」(にいぞろいと読むらしい)が踊町ごと、各所で行われるのであったのですな。「人数揃い」とは本番さながらの衣装でもって、山車などを引き回すリハーサルなのだそうです。

 

 

そんなところへ現れたのは、大きな鯨の張りぼて!観光通りのあたりは踊町で言う万屋町のエリア、その「人数揃い」に遭遇したという次第です。本番さながらのリハーサルとなれば、このまま行列にくっついていけば潮吹きが見られるのであるか?!と思ったですが、何せ人が多くて多くて…。どうやらシーボルトも著書『日本』の中で触れたという「鯨の潮吹き」ではあるも、あまりの人混みに退散したのでありましたよ。

 

とまあ、かように地元に愛されている「長崎くんち」ですけれど、本来的には「長崎の氏神「諏訪神社」の秋季大祭」(長崎伝統芸能振興会HP)でして、寛永十一年(1634年)に始まったのだとか。で、「長崎の氏神」とも言われる諏訪神社の由緒はといえば、同社HPにはこのように紹介されておりまして。

長崎は、戦国時代にイエズス会の教会領となり、かつて長崎市内にまつられていた諏訪・森崎・住吉の三社を、寛永2年(1625)に初代宮司青木賢清によって、西山郷円山(現在の松森神社の地)に再興、長崎の産土神としたのが始まりです。

戦国時代にはイエズス会に寄進されていたという背景を持つだけに、一時はキリシタンの天国でもあった長崎。そこに、江戸初期になって既存の三社をまとめる必要があったのかと想像すれば、キリシタン勢力に押された神社の巻き返し策でもあろうかと思ったり。また、「慶安元年(1648)には徳川幕府より朱印地を得て、現在地に鎮西無比の荘厳な社殿が造営されました」となると、立派な社殿はこれまたキリシタンへの対抗上、幕府がとった宗教政策のひとつであるかとも。

 

そんな中で始まった「長崎くんち」も、どうやらお祭り好きの長崎人気質に当て込んだ氏子獲得(ひいてはキリスト教からの改宗)が目論まれていたような。今に至るも盛大に執り行われている「長崎くんち」のほんの一端に遭遇しただけではありますが、幕府の思惑はある程度、実を結んだのかもしれませんですなあ。取り敢えず、万屋町は鯨で溢れておりましたし…。

 

 


 

と、長崎のお話が半分くらいまで来たところではありますが、またまた唐突ながら美濃焼、瀬戸焼の里を訪ねつつ、ついでに近辺の美術館でめぼしい企画展を覗いて来ようと考えております。この、秋のひとときを逃してはならじといったわけでして。つうことで、次にお目にかかりますのはおそらく10/29(日)になろうかと。どうぞお見限り無くよしなにお願い申し上げます。ではまた。