ということで、東京・新木場にあります「木材・合板博物館」を訪ねたのでありまして、前回は木場の歴史に終始してしまいましたが、さてと展示の方をじっくりと…と、あんまりじっくり見ていましたら、フロアにおられた係の方(こういってはなんですが、およそ材木商関係の人だろうなあという雰囲気)から「ずいぶんと熱心にご覧になってますが、関係者の方?」と。いえいえ、興味本位の一般人でありまして…(苦笑)。
展示解説はまず木材の、森林がいかにヒトの暮らしと関わりが深いかといったあたりをプロローグとして。この辺と、さらに奥に入っても結構子供たちが「木」に関心を持てるような工夫がなされている印象でありますね。どうなんでしょう、今でも学校で木工をやったりしてるんでしょうか。ともあれ、ひとつ上のフロアでは社会科見学の小学生向けでしょうか、木工教室などのワークショップも行われるようです。
解説パネルはそれぞれに色鮮やかでイラストなども多用し、子供向けを意識したふうに思える一方で、実は大人にも、引いては業界関係者の目にも適うものを指向しているようでもあり…てな気にもなりましたなあ。とまあ、そんなようすは窺えたですが、興味本位の一般人があれこれ見て周って「ほお」とか「へえ」とか思ったあたりに触れておこうかと。単に木材の博物館ではなしに合板に着目しているわけですので、その合板の話など。
早速ですが、「合板ってどんなもの?」という説明を同館資料から。
木の板幅は丸太の太さが限界です。ところが単板を接着した合板は細い丸太からつくることができて、その幅は原理的に限界がなく、通常910mmか1220mmです。単板は丸太を数mmの厚さでカツラ剥きしたもので、幅方向の強さはほとんどなく、縦の強さが際立っています。その単板を縦横交互に奇数枚接着剤で貼り合わせて作る合板は、縦と横の強さを同じにしたり自由に変えたりすることができます。湿気の出入りで寸法が変わることもほとんどなくなるので、合板は理想的な板です。
どうも木材としての有難みは一枚板とかに目が向いてしまい、加工材は(こういってはなんですが)安物感が漂うにも思ってしまうところでしたですが、強度や反りのでないという利点があるのですな。それにしても丸太をカツラ剥きして作り出すとは、ここにも「もったいない」精神が息づいてもいるような。館内には木材をカツラ剥きする機械が置いてありまして、折に触れて可動させて見せてくれるらしいです。
もったいない精神の発露という点では、合板以上に集成材なんかもそうですかね。
ホームセンターなどでよく見かける集成材、「建材の狂いや乾燥時の割れ、反りが少ない」、「強度のばらつきが少なく品質が均一である」、「優れた断熱性と調湿能力を持っている」といった特長があるとなれば、便利に使われるわけですな。
とまあ、天然自然の木材とはまた別に利点のある合板・集成材ですけれど、いずれにしてもその特性を引き出すために必要なのが「接着剤」ということになりますね。これがちと悩ましいような…。
何が悩ましいといって、結局のところ接着剤の多くは石油化学の産物だったりするわけでして。ホルムアルデヒドが残留していたりもするようですのでね。ですが、こうした点には業界なりの取り組みがあるようで、天然資源由来の材料でもって石化由来のものに匹敵する効果を出せる接着剤の開発に取り組んでいるようでありますよ。未だ道のり半ばのようではありますが。
今でも多くの家屋が「木と紙の家」である日本の住宅は、木材以外の建材が多く出回るようになっていたとしても、気候風土の関係も絡んで木造が一掃されることはないでしょうなあ、おそらく。また、什器の類にもその温もりといいますか、冷たさの際立つ金属などとは異なる肌合いのある木材製はきっと使われ続けることでありましょう。そうした中では、合板も集成材も便利に使いつつ、その材料自体がまさに天然自然のものと言えるようなものとなるよう、新木場の方々にも頑張ってもらいたいものだと、そんなふうに思ったものなのでありました。