外国映画にオリジナルな邦題を付けるときに、かつてよくあったのは過去のヒット作のパクリまがいのものであろうかと。すぐさま浮かぶのは「愛と何とかのかんとか」といったところでしょうかね。
昨今は、かなり横文字をそのままカタカナ書きにした(ある意味で安直な)タイトル付けがなされるようになってますので、見かけるケースは少なったものの、カタカナ書きが有効なのはせいぜい英語に限られておりましょうか。それ以外の言葉をいくらカタカナ書きにしても、全く訳が分からないことにもなりますし。ですので、このほど見たアルゼンチン映画は『La odisea de los Giles』という原題がこのように。
『明日に向かって笑え!』とは容易に出所が知れようというものですけれど、本来のスペイン語タイトルは(「シネフレ」というサイトによれば)「まぬけたちの一連の長い冒険」の意であるらしい。とにもかくにも、コメディ映画であることは間違いないと思ったわけなのでありますよ。映画情報サイト「Filmarks」のあらすじ紹介はこんなふうです。
2001年、アルゼンチン。隣人達との温かな繋がりが残る寂れた小さな田舎町。放置されていた農業施設を共同で復活させるために貯金を出し合う住民達。だが現金を銀行に預けた翌日、金融危機で預金は凍結。しかも、この状況を悪用した銀行と弁護士に騙し取られて無一文となり、絶望のどん底へ。だが嘆いていたって始まらない!盗まれた財産を奪還して暮らしと夢を勝ち獲るべく、庶民軍団の奇想天外なリベンジ作戦が始まった!
とかく泣き寝入りに陥ってしまいがちの庶民の側も、それぞれ虎の子を出し合った出資金が一瞬にして消えてしまい、それを奪った張本人はすぐに身近にいたと知れれば、もう黙ってはいられないというわけですな。素人連中ならではの知恵を出し合って作り上げた現金奪還計画は、コメディだけにどたばたの展開となっていくのでありますよ。
まあ、そんな映画ですから、何も考えずに笑って見ていればいいのかもしれませんが、庶民としても「黙ってはおられない」となる瞬間があるということに、改めて気付かされるといいますか。引き合いに出すのは憚られるところながら、昨年7月に起こった元首相暗殺、そして先月の現首相暗殺未遂は手段として適切ではないことは言わずもがなではあるも、黙っていられなさが暴発してしまったことにもよるのではなかろうかと思ったりしてしまうもので。
本来的に政治不信があるのであれば、代議士を選出する投票という行動でもって対応すべきであるのはもちろんのことながら、どうもそうはならない。投票率の低いままに、選挙では組織票を投じる集まりには敵いようもないということになるわけで。さまざまな問題や不都合がありながら、今という瞬間にどうしようもない状況とまで言えないならば、静観していてもいいだろうということなのでしょうかねえ。今、静観してしまうことが、将来に禍根を残しはしないか、考えどころだろうと、個人的には思うのですが…。
映画のタイトルではありませんが、明日に向かって笑えるようにするには、今をどうするかが考えどころですし、そのことに黙ってしまう人たちがたくさんいる状況下、低投票率の選挙に買って「国民の負託を得た」と思い込むより憂うることに思いを致すのが政治なのではないですかね…と、ひたすらにネガティブ・スパイラルに陥ってきたところで、ふと目に止まったのが先日の統一地方選における杉並区議会議員選挙の結果でありまして。
なんとなれば、改選前に23議席だった政権与党勢力が選挙を終えてみれば15議席になっていたと。理由は投票率が前回選挙よりも4.19ポイント上がったことのようですね。杉並区ではおよそ2万票に相当するようですが、これがそっくり与党勢力外に投じられたといった勘定でもあるようで。かようなことが起こり得ることはもはや無いものと考えて、なんだかんだ言いつつもいちばん静観に陥っているのは自らではないかいね…と思い至ったような次第でありますよ(苦笑)。