先月、東京オペラシティの「ヴィジュアル・オルガンコンサート」を聴きに行って入場する際、かようなフライヤーが手渡されたのですなあ。「避難訓練コンサート」とやらのご案内でありました。

 

 

一見して即座に「面白いではないか!」と。まあ、避難訓練をして面白いとは穏当な言い方ではないかもしれませんですが、すぐさま思い浮かべたのが2011年3月25日に出かけた、東京オペラシティの演奏会だったのでありますよ。2011年3月、言うまでもなく東日本大震災発生の2週間後というタイミングでして、当時を振り返りますと、こんなことを書いていたのであるなあと。

大地震以降、状況が状況だけにあれこれの「趣味的お楽しみは封印!」てな感じになってます。これは、被災地の方々を思えばという気持ちや計画停電もあって節電に努めねばという意識もこれあり、出かける側としても、また主催する側としてもというところでありましょうか。
ですから、演奏会の類いは軒並み延期か中止、美術館も閉まったままで、多少芝居は続演されてる感じですかね。
そんな中で…、平日の昼間にあるコンサートが開演するというので、出かけてみました。東京オペラシティの主催公演で、極力電力消費を抑えて開催するというのが、果たしてどんなものであろうかとも思ったわけです。

オペラシティのコンサートホールはご存知の方もおいでのように、ガラス張りの天窓部分が開くようになっていますので、そこから差し込むノースライトを頼りに開催されたわけですが、演奏中にも相変わらず余震が感じられるという状況下、場合によってはいつ避難指示が出たりすることにもなろうか…てなふうにも思いつつ、井上道義指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢の演奏に聴き入ったものなのでありました。

 

とまあ、そんなことも思い出したこともあり、今回の「避難訓練コンサート」、出かけてみようじゃあないのと。ただ、申込が先着500名とあってはすぐに一杯になってしまうのではないの?と想像しておりますと、お隣のベンチにいた老夫婦がやはりこのコンサートのフライヤーを手にして話す会話が聞こえたのですな。夫の曰く「避難訓練コンサートだってよ」、妻の曰く「行かない。音楽が中断されちゃうんでしょ」と。この会話そのものに云々はありませんですが、そういう考え方もあるか…となれば、すぐに一杯と案ずることはないのであるなと考え直した次第でありましたよ。

 

結果的には「メール申込完了」てな通知を受けて出かけられることになり、さてと本日(3/20)当日を迎えたわけであります…が、朝起きてしばらく後に{?!」と。やおら、腰砕け状態が生じてしまい…。ただ単に演奏会を聴くだけなら出かけたかもしれないところなるも、今回は何しろ「避難訓練コンサート」とあって、「実際に非常階段を使用して避難して頂きます」と予め注意事項が記されてもいるわけですから、そんなときに痛みが増しては困ったことになる。止む無くドタキャンと相成ったのでありました…。

 

ですが、実際には「天災は忘れた頃にやってくる」もので、どれほど体の調子が悪くとも避難せねばならないことになるかもしれない。ちょっと前にNHKで南海トラフ巨大地震を想定したドラマを放送していましたけれど、その中でも避難訓練に際して車椅子の老人に「玄関先までは出てきてくださいね」と含んでおりましたですね。地域のどこに要介助者がいるのかを予めつかんでおいて、玄関先からは体のきく人たちが連れて避難させようという想定ができているわけですね。それを思えば、多少の不具合を押しても避難訓練に参加するのは日頃の備えというべきなのでありましょう。腰砕けを言い訳にしてはいられない状況もありましょうしねえ。

 

と、心構えは心構えとしても、今日のところはちと大事をとって穏やかに過ごすことにしたのでありますよ。それこそ「避難訓練コンサート」に出かけていたら聴けたであろうサン=サーンスのクラリネット・ソナタあたりをCDで聴きながら、静かにしていようと思います。では、本日のところはそういうことで。残念…。