しばらく映画のお話をしておりませんで久しぶりではありますが、ちとフィンランド映画のことを。「同国史上最大のヒット作となった戦争映画」(「映画.com」の解説に曰く)であるらしい『アンノウン・ソルジャー』という一作を見たものでして。

 

 

ナチス・ドイツのポーランド侵攻によって火蓋の切られた第二次大戦は、ポーランドをドイツとソ連とで分け合った後、もっぱら西ヨーロッパの戦線にばかり目が向きがちになりますなあ。さりながら、体よく(あまりよくもありませんが)ポーランド半分を手中におさめ、独ソ不可侵条約でさしあたり背後の憂いが無いとなったスターリンはバルト三国やフィンランドという隣接国に触手を伸ばしていったのでありますよ。

 

バルト三国はいずれも小国であることからソ連の圧力に屈してしまいますが、フィンランドは徹底抗戦の構えを見せたことから、1939年11月、ソ連が国境を越えて侵攻し、「冬戦争」が始まるのですな。大国ソ連に抗してフィンランドは奮戦するもカレリア地方をソ連領とすることで停戦ということに。やがて、停戦は敗れて再び戦端が開かれますと(継続戦争と呼ばれるらしい)、独ソ不可侵条約を破棄したドイツがソ連侵攻に向かう中、敵の敵は味方とばかりにフィンランドはナチス・ドイツと手を結んでしまうのですなあ。もはや英米仏にとってやむなく?ソ連は味方となっており、頼むに足りず…。

 

第二次大戦に関しては、ノルマンディー上陸作戦とか(映画『遠すぎた橋』で描かれた)マーケット・ガーデン作戦とか、とにかく西側のことばかり広く伝わりますけれど、東方(と言うか北方と言うか)の出来事には余り接することがありませんので、ノルウェー映画「ヒトラーに屈しなかった国王」や本作のように自国の歴史を描き出した当事国の映画にでも頼らねば分からないということになりましょうか。

 

個人的には2012年にフィンランドに出かけた際、市内近郊の美術館・博物館等が入場無料になる「ヘルシンキ・カード」で入れるからというだけで、「マンネルヘイム博物館」に出かけたところから、かようなフィンランドの歴史の一端をようやく知ることになったのでありますよ。マンネルヘイムは冬戦争、継続戦争を戦ったフィンランド軍の最上官、元帥だった人でして、ヘルシンキを訪問したヒトラーを出迎える写真が残されていたりも…。

 

ともあれ、映画では主に継続戦争の最前線が描かれて、カレリアからソ連軍を一端は押し出すも逆に押し返される撤退戦のようすは実に悲惨なものでありますね。「アンノウン・ソルジャー」というタイトルどおりに、個々に無名の兵士たちの多数がが砲撃に倒れ、傷ついている中で、上官(直接にマンネルヘイムというわけではありませんが)は「撤退はまかりならん。戦線を死守せよ」てなことを喚き散らすさまは見るにも聞くにも堪えない場面であろうかと。

 

歴史という大きな流れではとかく大局的な目線でしか語られることがありませんけれど、その実、戦闘はとても小さな単位でも行われていて、そこではひとり、ふたり、三人と傷つく者が出ているわけです。そのことごとに目を向けていては戦争などやってられんということになりましょうが、それならばやはり戦争そのものをやらんでおくべきではないかと思うのは誰しもではなかろうかと。

 

さりながら、第二次大戦の後にも戦争・紛争は数多く起こり、今に至るもウクライナとロシア間のみならず、戦闘状態に置かれた人々というのが世界のあちこちにいるというのは、いったいどうしたことであるか…。人間には闘争本能があるなどとも言われることがありますけれど、そうした「本能」で動くことを思いとどまるだけの進化というか適応というかをヒトという生きものは身に着けてきたのではなかろうかと。藪から棒のまとめ方をしてしまいますが、来る2023年には少しでも傷つく人のないような解決策がそれぞれの紛争地で考えられて行きますように、切に願うばかりでありますよ。

 


 

ということで、年越しまでにはまだ一日ありますですが、2022年は本日(12/30)でひとまず店じまいと致したく。年明け、2023年の開業日はまだ決めておりませんが(三が日中にはと思いますので、1/3かなとは想定しておりますが)、ともあれしばしの無沙汰を申し上げる次第です。2022年中、たびたびご来訪くださった皆様にはここで改めて感謝を申し上げます共に、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。では、また。