たぶん読響を聴きに東京芸術劇場へ出かけたときでしたか、入場時に分厚い公演案内のフライヤーを集めた束が渡されることは他の会場でも同様ですけれど、そうした束の中にランチタイムコンサート@トッパンホールの案内があったのですな。ヴァイオリンとピアノのデュオによるリサイタルですが、室内楽の演奏会で能動的にチケットを買ってでかけるのはせいぜい弦楽四重奏くらいなもので、その他の演奏形態を生演奏で聴くことがあまりないものですから、この招待制の公演に応募してみましたら見事!?当選。出かけてきた次第でありますよ(両親のところへ出かける行きがけの駄賃として)。

 

 

今回の演奏形態はデュオですけれど、この手の招待制公演は新進奏者のお披露目的なところもありましょう、フィーチャーされていたのは北田千尋というヴァイオリニストで、プロフィールによりますと「第65回全日本学生音楽コンクール中学生の部全国大会第1位」とありましたから、いわゆる神童系となりますかね。ちなみに第65回のこのコンクールは2011年だそうですから、当時中学生だったとしてすっかり大人になって(といってもまだ若いですが)、どんな演奏家になったかのかな…と、新進プレーヤーの動向を追っかけているような方々にはより楽しみであろうと思ったりしますですね。

 

と、ここでふと思い出したのは、しばらく前のTV番組(といってしばし検索…。結果としてEテレ『クラシック音楽館』5/22放送分「次世代の挑戦者たち」と判明)で見かけた吉村妃鞠(番組内ではHIMARIと)という神童ヴァイオリニストのことでありますよ。この人、というよりこの子は現時点でまだ小学生ながら、すでに数々の海外コンクールで第1位獲得を量産しているということでして、そうはいっても小さな体で技巧に優るところが感興を読んだりするのかいね…といささか眉唾で番組を見ていたような次第だったのですね。

 

さりながら、いざN響との共演でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲が始まりますと、「ん!」とつい膝を乗り出すような具合に。なんとなれば、個人の好みの問題でもありましょうけれど、名曲と言われるメンデルスゾーンのこの曲は「たしかにいい曲なんだろうけど…」と思いつつ、いつ耳にしても馴染み切れないところがあってもやもやするところが、この曲に膝を乗り出すようなことがあろうとは思ってもみなかったわけでして。確かに、子供も子供ですので、そんな演奏してたら壊れてしまうのではないかというくらいに華奢な体格ながら、N響をバックに実に堂々としたステージ上の立ち姿であるばかりか、演奏しているさまからは全く子供を感じさせない以上のものがあったのでありますよ。結果、メンデルスゾーンのこの曲が初めてストンと落ちたような気にもなったわけです。

 

ですが、ここまで熟成、悪く言えば老成しているとなると、この先いったいどうなって行くんだろうかなと、つまらぬ心配を。同じ放送に登場したもう一人、ピアニストの亀井聖矢(こちらは20歳になるかどうかという年齢)が小さい頃から相当の技量だったものの、その後の挫折を経て今がある…てな話をしており、凡人としては「そういう苦労があってこそで、その経験が無いとなればこの先は…」などと、まだ小学生のヴァイオリニストの将来にいらぬ心配を感じたりしたわけなのですね。はたしてどうなって行きましょうか…。

 

どうも話がすっかり脇道(別の奏者の話)になってしまいましたが、改めて今回のリサイタル@トッパンホールの方を振り返ることに。

 

はじめのうちは些かなりとも緊張していたんでしょうか(プロ奏者に失礼ながら)、最初のモーツァルト、続くベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタではなにやらか細さを感じてしまうというか、逆に言うと堂々としたピアノに負けているような気がしたものです。さりながら尻上がりに本調子であったか、最後の曲目、シューベルトのロンド ロ短調に及んで「これはコンチェルトであるか?」というくらいの掛け合いがピアノとの間で展開したものでありましたよ。

 

この一時間半くらいの短い間でも、「ああ、若い奏者には伸びしろがあるのであろうなあ」と感じたりしたものですが、先ほどEテレで見たと言った奏者の老成ぶり(言葉は悪いですが)はどうなんだろうと思い返したり。「はてさて、この先どうなって?」という感想はこうしたこととも絡んでのことでありますなあ。ま、特段の目利き(耳利きか?)でもありませんので、単なる個人的印象というだけではありますけれどね。