お隣、立川市の図書館で「広報たまちいき」なる地域情報紙を見かけて、「おお、こんな場所もあったのだあね」と。季節はまさに今!でありましょうから、梅雨の合間をいいことに自転車を飛ばして出かけて行った次第。多摩都市モノレールの玉川上水駅と桜街道駅の中間あたりを西へ入っていった先で、お目当ての「湖南菖蒲園」にたどり着いたのでありました。
正式には湖南衛生組合菖蒲園と言いまして、多摩地域の中の5つの市共用のし尿関係処理施設が本来のようですけれど、組合が設立した昭和36年(1961年)当時の多摩地域にはまだまだ下水道が行き渡っていなかったようす。その後に整備が進んで、今では処理規模が減ったことから?敷地内には菖蒲園が開かれた…てなところでしょうか(後半分は想像です)。ちなみに湖南というのは(これもおそらくですけれど)多摩湖(村山貯水池)の南側であるからかも。多摩湖はそんなに近くないんですけどね…。それはともかく、園内の菖蒲田にはほどほどに花が咲き競いつつある…てな感じでありましたよ。
近辺では東村山市の北山公園が菖蒲田で知られていますけれど、訪ねるには早すぎる時季であってつぼみにもなっていない…ということがずいぶんと前にありまして、今回もまだこれからという株もたくさんあるものの、全体に眺めやる分にはまずまずかなと思えたものでありましたよ。
最盛期にはぎっしりと花で埋め尽くされるそうではありますけれど、ところどころにまばらな群生が見られるというありよう自体が、同じパターンを繰り返し使って描かれたという尾形光琳の「燕子花図屏風」を思い出させるといいますか、個人的には余白を大事にした日本画に相対するような気にもなりましたですよ。
しかしまあ、「いずれ菖蒲か杜若」とはよく言ったもので(ここでは「菖蒲」と書いて「あやめ」と読みますが)、アヤメとショウブとカキツバタ、よくよく花を見ればその違いには気付くものの、遠目ではなかなかに判別が難しいですな(といって、「いずれ菖蒲か杜若」の本来の意味は「見分けがつなかない」というより、「優劣つけがたし」ながら…)。
とりあえず、この場所には花菖蒲のさまざまな種類が植えられているようで、ところどころその名を記した札が小さく地面に差してあったりしますが、これがまた、付けも付けたり、何とも優雅な名前だったりするわけです。ちと花にぐぐっと寄って見て、名前と見比べることに。
上から順に「江戸美人」、「青い鳥」、「紅の雲」、「千里の霞」、「長生殿」、「伊勢路の春」、そして「落葉衣」と。「いずれ菖蒲か杜若」ではありませんけれど、花菖蒲の中だけでも俄かに優劣はつけ難し…ではありませんでしょうか。一時、こうした花を愛でることで古人は鬱陶しい梅雨どきの気分を紛らしていたのかも。そして、そのあとには暑い暑い夏がやってくるのだなあ(詠嘆)と。