青森にいる間(といっても2泊3日ですけれど)何度か駅前を往来したわけですが、
駅近くにあって気にはなっていたこちらの施設にいよいよ入り込んでみることに。
なかなかに現代的な印象の外観を持つ建物ですけれど、
青森市文化観光交流施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」というのが正式名称のようですな。
青森の物産を扱う土産物店や飲食店も入っておりますが、やはりメインは「ねぶたミュージアム」で。
何しろ青森といえばねぶた祭というわけですが、
古くは七夕の灯籠流しに始まり、これの拡大発展形でもあるという青森ねぶた、
人々の熱い思いはどんどんエスカレートしてもいったようすが、歴史の解説から窺い知れるところです。
取り分け幕末から明治にかけて、町内が競って大型ねぶたの製作に力を注いだために
いさかいや衝突も頻発、ついには明治政府派遣の権令(今の県知事に相当すると)から「野蛮な風習」として
禁止の憂き目を見たこともあったそうでありますよ。ねぶたに限らず古来からの土俗的な「祭」には、
ありそうなことですよね。力の注ぎ所が一点集中だったでしょうし。
そんなことがありつつも、その後復活したねぶたは大型化の技術的側面とともに、細工や描画の洗練が進み、
ねぶた作りは町内の住民の手から離れ、専門職たる「ねぶた師」の手がける作品へと変わっていったそうな。
腕ひとつとっても非常に大きなものですし、テーマに沿った演出上必要な筋肉の形などを
針金で作り出すのは、専門家の仕事ならではなのでもありましょう。
と、かような解説展示の部分を通り抜けますと、1階・2階吹き抜けの大型ねぶた展示スペースと至ります。
いやはや、なるほど大きなものですなあ。
自宅のご近所である東京・立川市の羽衣町でも夏にねぶたが出たりするのを一度見にいった折、
「大きさはこんなものであるか…」と思ったものですが、さすがに実物は巨大であるなあと。
展示物として残されただけあって、いずれも名だたるねぶた名人による作品であるようす。
ねぶた師の仕事は弟子に受け継がれるのでしょうけれど、そこにはやはり世襲もあり、
中には女性のねぶた師も登場するようになっているようで。
コロナ禍によって2021年度の祭自体は中止だったようですけれど、
こちらは品評会で金賞を受賞した「雷公と電母」という作品でして、まさに女性のねぶた師が手掛けたもの。
シャープな線がとても現代的であると同時に、雷公の奥さんとはいささか強面にも思われる電母には
柔和さを窺い見るような。他の作品には無い女性像のようにも思えたところです。
と、そんな大型ねぶた展示コーナーの一角では、ほどほどの(ということは理解可能な)青森弁でもって、
ねぶた祭での飛び跳ね方を体験してみようと呼びかけておりましたですよ。
笛太鼓とともに、♪らっせらーらっせらーという掛け声のもと、子供たちは大喜びで飛び跳ねているあたり、
将来のハネトはこうして育成されるのであるかとも。実際、動きとしてはシンプルで素人にも敷居は低そうです。
コロナが落ち着けばまた盛大な祭が展開されるのであろうなあと思ったものでありましたよ。