さてさて、昭和記念公園・花みどり文化センター内の展示の話が続きます。

3つ目の展示は「ペーパードライポイント」という技法による凹版画の作品展でありました。

 

 

版画の展覧会を見るたびに「版画の技法にはいろいろあるのだなあ…」とまでは思うものの、

技法の違いをはっきりと意識するところまでは及ばず、ついついぼんやりと見るばかりで…。

 

そうではあってもさすがに「ドライポイント」という名称は聞いたことがありますな。

本来は銅板を用いて、そこに直接ニードルで絵を描くことから、技法の中でも「直接法」と言われるそうな。

 

対して、同じ銅版画でも、防食材の縫ってある銅板を使い、ニードルで線描することで防食材が削られ、

その後に酸に浸すと、防食材の削られた部分が腐食して凹版が生み出されるというのが、エッチング。

こちらは「間接法」と言われるようで。

 

断然、ドライポイントの方が手間がかからないではないかと思ってしまうところながら、

直接に削り出すことから想像が付くように、線を掘った溝に沿って部分的に

土手のような盛り上がりが出来たりもしてしまうとか。より線を鮮やかに出すためには

腐蝕で凹版を作り出すエッチングの方が秀でているとも言えましょうか。

 

ともあれ、直接法に分類されるものには、ドライポイントの他にエングレービングやメゾチント、

間接法の方にはアクアチントがあって、これらはすべて凹版画の仲間なのですな。

このほか、木版は凸版画ですし、石版画と言われるリトグラフは平板画ということに。

それぞれに特色があって、何を選ぶかは作者(の狙い)次第となりましょうから、

版画の世界も入れ込むと深い深いものがあるようです。

 

ところで、版画の種類でドライポイントと言えば、一般には銅版画のようなのですけれど、

ここでの作品はペーパードライポイントというのですから、紙を彫るイメージでしょうか。

 

銅板を使う以上に削りくずが気になるような気もしますが、金属を削る場合には

ともすると手を切ったりという怪我がありそう…と、そんなふうにも思いましたら、

ペーパードライポイントの歴史なる解説文を見て、なるほどなあと。

今から四十年程前に、日本のある教科書会社により小学校の教材として広められたが、現在は廃れている。

そもそもは学校教材として考え出されたものだったとは。

それだけに安全に取り組めることを目指して、本格的な芸術作品はこれで馴染んでから、

違う技法にトライしてねという導入教材だったのかもですね。解説文にも「黒と白の短調な版画に過ぎなかった」、

「専門の版画家が何人も試みたが、美術の領域まで高めることができなかった」とありますし。

 

ただ、そうは言っても諦めない人はいるわけで、本展作者の師匠と言う方が研究を重ねた結果、

表現に幅が生まれ、学校から姿を消しても、受け継いで作品を生み出す人が現れているわけですな。

 

もっぱら学校でしかやらなかったものを、敢えてその後の利用するてなところから、

ついつい思い浮かべたのは(音楽の話で畑違いではありますが)指揮者・広上淳一の鍵盤ハーモニカ、

これを思い出したのでありますよ。

 

小学校の音楽の授業で合奏したりするときには鍵盤ハーモニカが使われたりしたものですが、

これを大人になってまで使っている人はそうそうおるまいと思うときに、マエストロ広上は

オケとの練習に愛用の楽器を持ってきて、「ここはこんなふうに」と鍵盤ハーモニカでもって

吹いてみせたりしているようです(このあたり「題名のない音楽会」などで見たのでしたかね)。

 

と、何ごとも諦めずに極めれば…かもしれませんけれど、話が脇へ逸れたついでに、

鍵盤ハーモニカというよりは「ピアニカ」という方が馴染むと言う方もおいでかと。自分自身、あの楽器は

「ピアニカ」というだとばかり思い込んでいたわけですが、これは登録商標らしいですなあ。

楽器としては電子オルガン、商標は「エレクトーン」というが如しのようでありますよ。