都心では浮かれたイベント?が続いている中、状況はいささかも好転することがないようで、

相変わらず多摩地域でうろうろしておりますが、平日のみ開館であるためにこれまで出向けていなかった

企業ミュージアムをひとつ、訪ねてみたのでありました。

 

 

最寄り駅はJR八高線の北八王子。ここから徒歩で行くか、八王子駅(もしくは日野駅)からバスを使うか。

あまりの暑さに思わずバス(八王子からは多発、日野からは30分に一本くらいでしょうか)を利用して、

やってきたのはオリンパス株式会社の技術開発センターでして、この一角にミュージアムがあるという。

 

 

電話予約の際に「入り口にお名前を出しても差し支えありませんか?」と尋ねられ、

ようすが想像できないながらも「支障無し」と返答しておきましたが、こんなふうに表示されるのでしたか。

しかもたったひとりで訪ねても、社員の方がピタリと付き添って解説してくれてしまうとは、何と気前の良い。

 

ひと頃、損失隠しなどの不祥事で揺れた会社であるだけに、イメージ刷新を図ろうとしているのかも…とは

いささか穿った見方ではありますが、個人的にはOM-1以来、現在もカメラはひたすらにオリンパス・ユーザーで、

それなりに思い入れはあるのですよね。

 

それだけに、昨2020年にカメラ部門は切り離されて別会社化されたのは「うむう…」と思ったものですが、

そんなことはともかくも、ガイド役の方に導かれて展示スペースへと向かいます。

 

 

入り口左手に、大きな山の写真が見えていますけれど、

カメラを始めとする光学機器の会社なればこその大きく引き伸ばした写真?…ではなくして、

社名の由来がここにあるという。写っているのは高千穂峰であるということで。

 

日本神話で神々が集う場所というこの山にあやかって創業者が高千穂製作所と名付けたのが

社名のそもそもで、時に大正8年(1919年)でありました。その後にまず商標として使用し、

やがてオリンパス光学工業株式会社として社名にも冠する「オリンパス」は要するに

ギリシア神話で神々が集うオリンポス山のこと。高千穂とは神々の居場所つながりだったのですなあ。

 

とまれ、そんなオリンパスにとって事業の三本柱となったのが、いずれも光学技術を活かしたもので、

科学分野(特に顕微鏡)、映像分野(特にカメラ)、そして医療分野(特に内視鏡)でありますね。

このあたりは歴史的に、と言わざるを得ないわけですが、それはカメラを含む映像分野の事業は

別会社になってしまっておりますので(返す返すも残念といいますか…)。

 

 

創業当初のオリンパスならぬ高千穂製作所はまず顕微鏡の国産化を事業目標とするのですな。

ちなにみ上の写真に見るレトロな顕微鏡は生物学研究でも知られる昭和天皇ご愛用の品ということですので、

製品化したものはなかなかに高評価を得られたのでしょうねえ。

 

光学機器でも顕微鏡のように小さくて精度の高いものを作る技術がオリンパスには培われたのでしょう、

カメラにしても小型軽量はオリンパスの代名詞、オリンパス・ペンにしても、一眼レフのOMシリーズにしても。

 

 

高校から大学にかけてこのOM-1を愛用していたものですから、ついついカメラにひっかかってしまうものの、

話は先へ。小型軽量の光学機械に秀でた技術を持つオリンパスはこの後、医療分野へと進むのでありますよ。

今でいう内視鏡の開発でして、1950年(昭和25年)日本では初めてとなる胃カメラが誕生したと。

 

 

この当時のものは文字通りのカメラであって、今のように胃の中を直接に覗くのでなくして、

胃の中の写真を撮るためのものだったようで。極小レンズに極小フィルムを内蔵した管というわけです。

 

それにしても太い!

2年ほど前に内視鏡検査を受けざるを得なくなった際、この初号機よりは

格段に細くかつしなやかになっていたでしょうけれど、それでも死ぬ思いをした者にとっては

これを見ただけで卒倒しそうになったものです。

 

今ではこの内視鏡を通して、医師がリアルタイムに内臓を直接見ることができるのみならず、

生体検査のための細胞を採取したり、はたまたポリープを切除したりもできるわけで、

そのアタッチメントといいますか、実にさまざまな形をしたものが用意されている。

その数は1,000種類にも近いのだとか。

 

 

という具合に事業の方向が民生品から離れてしまって、

だんだんと一般人には馴染みのなくなっていってしまうかもしれないオリンパス株式会社ですけれど、

不祥事の風聞も忘れられ、やがて業績が安定すればカメラを始めとする映像分野も本体に戻ってきましょうか。

個人的にはニコンよりもキャノンよりもずっとご贔屓(何かとナンバー1企業に背を向けるタイプだもので)だけに

今後が気になるところなのでもありました。