先日見ました映画「カツベン!」ではエンディングにかぶさって

「カツベン節」なる曲が流れておりましたですねえ。

「昭和な」方々ならばおよそ聞き覚えのあるメロディーでしょう、

その替え歌が「カツベン節」だったのですなあ。

♪ラメチャンタラギッチョンチョンデ パイノパイノパイ パリコトパナナデ フライフライ

「昭和な方々なら」と言いましたですが、本来のこの曲は「東京節」というらしく、

リフレインのところから取って「パイノパイノパイ」とも言われているようですが、

大正時代に大いに流行ったものであったそうな。

 

ですが、個人的な記憶としては1970年代にミツカン「味ぽん」のCMで使われ、

なべおさみが出ていたときのイメージが刷り込まれているのかも。

「ラメチャンタラ」の部分の歌詞がなかなか思い出せず、

「な~べちゃんたら」だったかな?など考えてしまったのも、

このCMの絡みかもしれませんですねえ。

 

ところで、この「ラメチャンタラギッチョンチョンデ~」のフレーズは

いわゆるリフレイン部分であって、実はその前に意味不明では無い歌詞が付いている。

だからこその「東京節」なのですけれど、これは知りませなんだなあ。

 

ひたすら同じメロディーの繰り返しではありますけれど、結構これが長い曲でして、

歌詞の中にはこんなところもあるのですね。

♪東京で自慢はなんですね 三百万人うようよと
米も作らずに暮らすこと タジれた市長を仰ぐこと
それにみんなが感心に 市長のいうことをよく聞いて
豆粕食うこと 痩せること
シチョウサンタラ ケチンボでパイノパイノパイ
洋服もツメエリで フルイフルイフルイ

「タジれた市長」とは聞きなれない言葉ですので、「たじれる」をコトバンクにあたってみますと、

こんな語釈が出てきましたですよ。

思考力が減退するなどして変調を来たす。また、年をとって子どものように無邪気になったり忘れっぽくなったりする。ぼける。もうろくする。

東京市長は今ならば東京都知事となりましょうけれど、何だか今も昔も…ではありませんか。

こうした点から考えても、「東京節」は単に流行り歌というばかりでなく世相を風刺する歌でもあったわけですね。

 

しかも、この歌詞を作った添田知道(芸名は添田さつき)という人は「演歌師」であったということでして、

この演歌師、後には流しの歌うたいと同義とされるようではあるものの、元は大道を流し歩き、

自作の歌詞を載せた歌本を売ることで生業を得ていたそうな。いわば、歌う瓦版売りといったところでしょうか。

 

歌うことで世相を風刺するという点ではやはり歌詞が大事なわけですね。

1919年(大正8年)に第一次大戦の戦後処理を決めるパリ講和会議があったときには

「東京節」と同じメロディーに乗せて「平和節」なる歌も作られました。

♪めでたいめでたいおめでたい 戦争がすんでおめでたい
物価の高いのもおめでたい 花火をあげろ旗立てろ
いざ祝えみんな祝え 天下太平おめでたい 日本が一番おめでたい
ニッポンマイハタカイカラパイノパイノパイ ナンキンマイヤトンキンマイデフライフライフライ

何がおめでたいのやら…といったふうでもありますけれど、浮かれる世相に釘を刺すところもあろうかと。

うっぷん晴らしはこういう形をとることもありましょうね。

果たして今のご時世を往年の演歌師が見たならば、どんな歌を歌って歩くことでしょう。

想像するだけもうっぷん晴らしになるかもしれませんなあ(笑)。