「人生は狂詩曲」。ルビがふってありますので、
読みとしては「人生はラプソディー」と呼んでもらう意図でありましょう。
オリジナルのタイトルは「BRABANCONNE」というもので、
これは「ブラバントの歌」という意味で持ってベルギーの国家らしいですなあ。
つまりはこれは(珍しくも?)ベルギー映画でありまして、
英語のタイトルでは「BELGIAN RHAPSODY」、邦題はこちらを意識した名づけなのでしょうなあ。
ともあれ、ベルギーのドタバタ、そんなことが窺える英語タイトルですけれど、
フライヤーには「ベルギー弱小吹奏楽団」と見えるところからは、
またまたへたれチーム(この場合はバンドですけれど)の奮闘記かと思えば、
実はは欧州コンクールの代表を決めるベルギー国内予選の最終戦に臨むバンドということですので、
看板に偽りありという気もするところです。
ところで、このベルギー国内の最終予選に臨むのが、ワロン地方とフランドル地方の2つのバンドなのですな。
ご存知のようにベルギーの国土はざっくり北側をフランドル地方、南側をワロン地方と分けることができますが、
それぞれフラマン語(ほぼほぼオランダ語でしょうか)、フランス語を話し
フランドルは商業で栄え、ワロンは豊富な鉱物資源から鉱工業で栄えたと、
あれこれ違いが大きいことで決して仲の良くない間柄なのですなあ。
産業革命の時期には鉱工業優位でワロン地方が幅を利かせ、
その名残か、地理的にはフランドル圏に位置する首都ブリュッセルではフランス語が目立ち、
それだけにベルギー=フランス語と思えるところかと。
ベルギー出身の名探偵エルキュール・ポワロもフランス語を話しておりましたな。
されど、重厚長大産業の落日とともに商業盛んなフランドルの盛り返しがあり、
何かと衝突を繰り返している。それだけにフランドルとワロンを代表する2つのバンドには
「我こそはベルギー代表」との強い思いを抱いているわけです。
かかるようなわけで、この2つのバンドが競り合うのはむべなるかなですけれど、
たまたまこの2つのバンドがTV収録のため、同じスタジオで顔を合わせたときにトラブルが起こる。
同じ状況下に置かれた2つのバンド、さすがに今回は呉越同舟ですので互いを責めるわけにはいかない。
となりましたときに、ワロン側は「フランスの仕業かもしれない」と言い出し、
一方でフランドル側は「いやいや、オランダのせいに違いない」てなことを言い出すのでありますよ。
ワロン地方はフランス語を話しており、フランドルと仲がよろしくないのなら
いっそフランスに与してしまえばよさそうなものですけれど、フランスに対する敵愾心もなかなかのもの。
反対にフランドル地方もフラマン語でもってオランダとは親和性がありそうながらも、自分たちはベルギーだと。
このあたりの諍いは歴史的な背景に根差しているのは疑いのないことで、
今でも(地域によって差はありましょうけれど)江戸・幕藩体制下の括りを強く意識しているところが、
日本でもあったりするわけですから、傍からどうのこうの言えたものではありませんが。
こうした状況下で、ワロン、フランドル、2つの地方を代表するバンドのお話が展開するわけですが、
そこで生ずる軋轢の数々、先にベルギーの原題、邦題、そして英訳のタイトルにも触れた中では、
英語の「BELGIAN RHAPSODY」は、なるほどなと。
もっともベルギー本国でこのタイトルをつけるとは思えませんけれどね。