日頃から外国映画の邦題になんのかんのと言っておることからして、
ついつい見てしまいましたのがNHK「日本人のおなまえ」という番組でして、
前回放送回は「映画タイトル!大ヒットの法則」という内容だったものですから。

しかし「日本人のおなまえ」という番組タイトルからして、
基本的には人の名前にまつわる事柄を扱うものであるところへ「映画タイトルとは?!」と思うわけですが、
まあ、「日本」と「名前」という部分は合致しておらなくもないか…と、ここに食いつくのはやめておきましょう。

先にも申しましたように、映画のタイトル、取り分け外国映画の邦題にはとやかく言ってしまう方ではあるも、
その邦題を考えておられる方々にももちろん苦労はあったということですなあ。

今でこそ単純に(安直に?)外国語の音をそのままカタカナに置きかえただけの邦題も多くなっていて、
番組で取り上げられていた映画「ジョーズ」という名付けなどは「JAWS」そのままではないかと思うところながら、
実はこれをそのまま使うことには「敢えてそうする」という意図があったと聞けば、それはそれでと思うところかと。

敢えて原題をカタカナに置き換えて「ジョーズ」としたのは、
当時この英単語が一般にすっと理解されるものではないことから来る「何、これ?」感を出したかったのでしょう。
また、短いひと言で日本人としても呼びやすく、インパクトがある音でもあったと。
得てして濁音の使用や「ン」で終わるものなどは、ヒット作を生む元とも考えられていたようで。

そもそも公開前の仮りのタイトルは「あご」であったようでして、
これで公開されなく良かったてなコメントが番組内で飛び交いましたけれど、
内容とのギャップがありすぎて、やはり「あご」では無理があったことでしょうねえ。

だいたい外国語のタイトルが持つニュアンスまでをも邦題で言い表すのは難しく、
そんな例のひとつにもなりますが、やはり番組で紹介されていた「ローマの休日」でしょうか。

原題は「Roman Holiday」ですので、拙い英語力でも「そりゃ、ローマの休日でしょう」と思うところが
実は落とし穴だというのですな。確かにローマでの休日を過ごすという意味合いで「ローマの休日」を英訳すれば
「Holiday in Rome」となるであろうことに思い当ろうかと。

では「Roman Holiday」の意は?となるわけですが、ローマ人の休日と訳せるなとまでは気付きますが、
それが慣用句的に特別な意味を持っているとはよほど詳しい方でもないかと分からないのではないでしょうか。

ローマ人の休日、すなわち古代ローマの人々のお楽しみはといえばコロッセオでの剣闘士たちの闘い、
殺し合うまでの闘いを見届けることに熱狂したローマ人たちのようすは後々に描かれた絵画ながらも
ジャン=レオン・ジェロームの作品などからもよおく窺い知れるところでありますね。

こうしたところから「他を犠牲にして得られる利益」と言った意味合いが「Roman Holiday」には
込められているというのでありますよ。

翻って、どうみてもロマティック・コメディと見える「ローマの休日」は
むしろ原題が「Holiday in Rome」の方が適当なのではとも思えるところながら、
やはり「Roman Holiday」と付けられた裏読みが必要であるということなのですな。

つまり、ジョー(グレゴリー・ペック)はアン王女(オードリー・ヘップバーン)のお戯れを暴くという犠牲を払って
特ダネという利を得ようとしたわけです。また、アン王女の方は公的な立場を投げ打つ、

つまりは自国民と王室の関係を犠牲にすることで自由を、そしてジョーとの愛を得ることでもあった…わけですが、

ジョーもアン王女もどちらも、最後には自らの利を捨てる、つまり他を犠牲しない選択することになるてなあたりが

深読みポイントであるようです。

 

実際にはこの映画の脚本を手掛けたドルトン・トランボに絡んで更なる深読みポイントがあるということですけれど、

番組の受け入ればかりをこれ以上続けてもなんですので、この辺までといたしまして、

映画ばかりではないものの、タイトル付けを侮ってはいけんのだなと改めて思うところでありましたよ。