大学入試センター試験、おっと今年からは大学入学共通テストでしたか、

ともあれそのリスニングのテストを受けるにあたってはイヤホン実物が耳に合うかどうかを

予め確認することができて、万一どうにも合わない…というときには試験時にヘッドホンの貸与をうけられる

「イヤホン不適合措置」というのがありますな(基本的には出願の際の事前申請が必要のようですが)。

 

今や街中でも多くの人たちがイヤホンで音楽(とは限らないのでしょうけれど)を聴いているのを目にしますが、

ヒトの身体は個体により千差万別でしょうから、こうしたイヤホン利用も適いにくい状況があろうかと。

 

かく言う自らも、かつてはあまり意識したことがなかったものの、左耳にさしたイヤホンがどうもぽろぽろ落ちる。

強く差し込んだつもりでもさほどに深くは入っていないのか、やっぱり落ちたりする…ということがあって、

「ああ、これは耳の穴の形状によるものであるか」と思い至った次第。そういうことでもないと、

ごくごく普通のイヤホンが不適合なんつう人がいるの?みたいに思ってしまっていたかもしれませんですね。

 

イヤホンが合うかどうかなど、小さなことではないかと考えてしまいそうですけれど、

大学入試という一発勝負の場で試験問題が聴き取れないとなれば、人生の一大事でもありましょう。

人それぞれの身体的個体差から来るあれこれの不具合、個々の事例としては想像しても追いつかないながら、

自らは健常であるとしても、様々な不具合をそれぞれに抱えているかもしれないとは心しておきたいものです。

 

とまあ、そんなことをつらつら考えたりしましたもの、映画「パリ、嘘つきな恋」を見たりしたからでもあるわけで。

 

ジョスランはパリの大手シューズ代理店で働くビジネスマン。イケメンでお金持ちで女性にモテるが、恋愛に求めるのは一時的な楽しさだけ、という軽薄な男。ある日、ひょんなことからジョスランが車椅子に座っていると、偶然美しい女性ジュリーと遭遇。彼女の気を引くために「自分は車椅子生活だ」と、とっさに嘘をついてしまう。すっかり信じたジュリーが彼に紹介したのが、姉のフロランス。車椅子生活を送りながらも、ヴァイオリニストとして世界中を飛び回り、快活でユーモア溢れる魅力的なフロランスと出会い、ジョスランは本気で恋に落ちる。2人はデートを重ね、互いに惹かれていくが、ジョスランはまだ最初の嘘をついたまま。一方、実はフロランスも彼に隠し事があるようで・・・?果たして、トンデモナイ嘘から始まった恋の行方は! ?

AmazonのDVD紹介にはかようなあらすじがありまして、「こらまた軽薄な嘘つき男の話か」と思うところでして。

このところ「嘘」に係わる考察(とは大仰ながら)を巡らしたりしていたところですのでね。

 

ここでは「嘘」をつくと、その嘘を繕い続けなくてならない、

嘘をついたが故に余計な手間がかかることがよお分かるわけですけれど、

ここではそちら方面に深入りするのでなくして、車椅子生活を送っているフロランスの強さに

目が釘付けになることなのですなあ。

 

映画のストーリーではフロランスのひたすらな活発さ、前向きさが見られるわけですけれど、

それが反って話には出てこないところでフロランスの苦悩があるだろうことを想像させるような。

 

作り方によってはその苦悩をこそ見えるということもありましょうけれど、

それを直接的に描かないながらも想像させるのは、思いのほかじんわりとくるものです。

ま、全体としてコメディー風の描き方には、もしかすると眉を顰める方もおいでかとは思いますが。

 

ともあれ、単純な受け止め方とは思うところながら、フロランスの姿を見ていますと

こまごました体の不都合、個人的にはイヤホンが使いづらいとか、はたまた耳鳴りがするとか、

時折ひざの痛みに襲われるとか、その他あれこれの不定愁訴を悩ましく思う暇があったら

なにくれとなくできることはあるだろうと、そんな気にもさせられるところでありますなあ。

 

題材が題材だけに手放しで面白かったと言うにはいささかの抵抗があるものの、

やはり体の不自由さを抱えた登場人物を扱った「最強のふたり」や「おとなの恋の測り方」を生んだ

フランス映画らしいあっけらかんを楽しめた作品でありましたよ。