アンデスのフォルクローレを聴いていて、ふと思い出したのが「クスコ」というバンドといいますか、

シンセサイザーを使ったドイツ人二人組の音楽ユニットといいますか。

クスコは言うまでもなくインカの都だものですから。

 

なんとなあく日本の「姫神せんせいしょん」を思い出すところでもありますが、

クスコのファーストアルバムは1980年発表だそうで、その1年後に「姫神せんせいしょん」もアルバムを出しますな。

「シンセサイザーが新しい」という時代だったのですなあ。

 

 

とまれ、そのクスコのファースト・アルバムがこの「デザート・アイランド」ですけれど、

ひと頃ヒーリング効果があるとしてもてはやされた、ただただ波の音を収録したアルバムでもあるかのようですね。

クスコという名前から結びつきやすいアンデスの雰囲気とはかけ離れたジャケット写真はあたかも

世界のビーチリゾートを音楽でめぐる的でもあろうかと。

 

さりながら、聴こえてくる音楽はビーチリゾートを思い浮かべるというよりも、何やら哀愁を帯びているといいますか。

時には青春歌謡のようでもあり、時にはマカロニ・ウエスタンのテーマのようでもあり。

とにかくじんわりと懐かしさを覚えるのですなあ。

 

当時としては最先端であったシンセサイザーの作り出す音(ピュ~ンとか、ポーっとか)が

すでにして懐かしさを覚える響きとなってしまったということになりましょうか…と、そんなことを思っておりますと、

「そうか!」と、また個人的に思い浮かぶことが。

このピューンとかポーとかいう音色がケーナに結び付いたのでありますよ。

 

もっとも、先にケーナを考察(?)したときには、その息吹のかすれが肝心だと考えたわけですが、

もちろん人工的に音を作るシンセサイザーにそうした揺らぎはないのですよね。

 

今ならば、プログラミングによって再現できるのかもしれませんけれど、それはともかくとして、

そんな気付き?も得ながら続いてもう一枚、「ヴァージン・アイランド」も聴いてみます。

 

 

これまた同様にリゾート感あふれるジャケット写真ですけれど、曲の印象もまた先に同様でありますね。

先には青春歌謡にも擬えられそうなとは言いましたですが、ここでは「フィリピン」とタイトルの曲で

よもやフレディー・アギラの「ANAK(息子)」がカバーされていようとは…。

ご存知の方はご存知と思いますが、とてもリゾート風な曲ではありませんですよね(笑)。

 

という具合にクスコの音楽を聴いてきて思うところは、

必ずしもそれぞれのメロディーに個性がないわけではないものの、どうも曲と曲の区別がつかなくなりがちに…。

なんでかなと思えば、曲の構成がシンプルというか、単純であることでしょうかねえ。

ベースラインにリズムが乗せられ、その上をメロディーラインが動くという、基本構造そのままにできているわけで。

 

例えばオーケストラなどでは音色のブレンド、曲調の緩急、ダイナミクスの変化などがあるところながら、

こちらは基本的に、実に淡々と進むのですよね。リズムの部分に多少の盛りはあるものの、

変化のバリエーションが少ないのだろうと思うところです。

 

と、こうした言い方になってしまいますと、「う~む」感を漂わせてしまってもおりましょうけれど、

そうであってもなお、たまぁに取り出して何やら懐かしい思いに浸る、それが捨てがたいクスコなのでありますよ。

 

後には「インカ伝説」などというネーミングのアルバムを出したりもするも、

これは未聴でなんともいえませんけれど、差し当たってはクスコ=インカ帝国の都といった結びつきで

先入観を持つのでなしに聴いてみるのがいいかもしれませんですね。