久しぶりに「立川まんがぱーく」に行ってみたのでありまして。

もうしばらく前の新聞記事ですけれど、巣籠り対策のひとつでもあったでしょうか、

数学に関わる物語の漫画を紹介していたことがあったのですなあ。

 

根っからの「文系」(というのが、本当にあるのかは分かりませんが…)であって、

だからこそなのか、数学にそこはかとないロマンを感じたりする者としては、

「読んでみようかいね」と思わされ、それがようやっと実現したような次第でありますよ。

 

 

最初に手に取ったのは『数字であそぼ。』という一作でして、

小学館の月刊フラワーズに連載されているということで、HPの紹介文にはこのように。

神童と呼ばれ育った横辺建己は西の名門といわれる吉田大学に入学する。ノーベル賞受賞者を多く輩出しているこの大学で、建己は物理学者を目指すが、初日の授業で早くも――…!?

主人公の建己(たてき)は神童と呼ばれたとありますけれど、とにかく記憶力が抜群であったことから

大学入試に至るまでの全ての入試を膨大な暗記量でもって難なく?こなしてきたという設定なのですな。

 

記憶力がいいというのは確かに大きな取柄のひとつであったわけですが、

大学での講義初日、数学の授業がちんぷんかんぷんで戸惑いを隠せない建己は

初日でもあるし、おそらく周りも同様だろうと高を括るも、

どうやら分からないのは自分だけと知るに及んでパニックに陥り、以来2年、引きこもってしまうことに。

 

何しろ教科書にある公式を暗記し、練習問題も全て暗記し、それで試験を乗り切ってきた建己には

「自ら考える」ことがまるで足りていなかったことを突き付けられるわけなのですね。

 

やがてなんとかできた友人の助けを借りて一念発起、数学をやり直そうとする建己ですけれど、

数学の勉強は逆ピラミッドのようなのだ、つまりは上を目指すにいくつもの道があるものの、

そもそも土台の一点が分かっていなければ登るに登れないではないかと教えられて、愕然とする…。

 

例えばとして、友人がやおらトイレットペーパーを取り出して、

円の面積の求め方を習っていない段階として、この円の面積を求めてみよと建己に。

これまでなれば「公式を暗記する」というのが建己の武器であったところが、

円の面積の求め方を知らない前提と言われて混乱する姿を前に、友人はやおらカッターを持ち出して、

トイレットペーパーの半径部分を切り裂いたのですなあ。

 

ぱらりと広がったトイレットペーパーは、これまで見せていた円形の面が切り裂かれたことで左右に広がり、

鈍角二等辺三角形になってしまった…となれば、これの面積は三角形の面積の求め方で出るわけですね。

 

分かっている方には「なにを今さら」なのでしょうけれど、この発想の柔軟性こそ養うべきものであって、

記憶力強化(建己の場合は、強化するまでもなく天性のものなのでそれに頼り切ってしまいましたが)では

無かったということに。

 

こうしたことがあって、ひそかに書店の参考書コーナーに赴いた主人公は、

いったいどこまで遡って捉え直せばいいのかと悩んだ挙句、「小1 さんすう」を買ってしまう。

これってなんだか笑うに笑えないような。気持ちが分かるといったよいのか…。

 

もちろん、自らに引き比べて同じようだというつもりではありませんですよ。

抜群に記憶力がいいわけでもないですし、試験を全てうまいこと乗り切ってきたとも言えない。

ですが、こと数学にフォーカスすると、建己の場合は大学に入って愕然とするのですけれど、

経験的には高校の数学ですでにしてそれまでとは違うことを思い知らされてもので。

 

あとがきに曰く、描き手の絹田村子自身、数学は苦手なようすですので、

やはり主人公には思い入れを感じているかもしれませんですが、

こののち建己がどのように立ち向かっていくのか、第1巻だけでは続きが少々気にはなりますが、

取りあえず別の作品へ…と、その作品につきましては次の機会にということで。