おそらくは昔放送したものの再構成・短縮版なのでしょうけれど、

NHKで「世界ふれあい街歩き ちょっとお散歩」という番組がありますですね。

 

世界各地の都市をかつては45分で巡っていたところ、「ちょっとお散歩」は15分しかない。

もっとも(当然ながら)リアルタイム15分の街歩きではありませんから、

それなりにいろいろ立ち寄ってみせてはくれますけれど、やはり食い足りない感じではありますかね。

 

とまれ、そんな「ちょっとお散歩」という番組で、録画しておいたものの中から、

メキシコシティ編を見ておりましたところ、ふと覗いたのがギター工房。

そこからギター職人らしいおじさんが試し弾きをする音色が通りに漏れ聞こえていたわけで。

 

「どうも聴き覚えのある曲であるな」と耳を傾けてふと気付いたことには、

これって「コーヒールンバ」でないかい?ということなのですね。

西田佐知子が歌ってヒットした、あの曲です(井上陽水とかカバーの方が知られているか…)。

 

されど、エキゾチックな歌詞と雰囲気、西田佐知子の独特の歌い回しが非常に印象的なこの曲、

印象はともあれ日本の曲だとばかり考えておりましたので、これがメキシコでも知られているとは?などと

思ってしまったところながら、実際にはベネズエラの作曲家による「Moliendo café」が原曲なのであるとか。

 

むかし耳にしたとき、歌詞の中に「コーヒーも鎌足」と聞こえるところがあって、

「いったいどんな歌だ?!」と思ったものですが、ここの部分は本当には「コーヒー モカマタリ」、

イエメン産のコーヒーのことだったのですなあ。「昔アラブの偉いお坊さんが…」という歌い出しですものねえ。

藤原鎌足とコーヒーに関係あるはずもなく…。

 

とまあ、かようにエキゾチックさ狙いの日本の歌かと思っていた「コーヒールンバ」ですけれど、原曲は

先にも触れましたように南米の曲で、これに日本オリジナル(原曲とは似つかぬ)歌詞がつけられたのだと。

 

かなりしっくりいって独特の個性ある歌に仕上がったと思いますけれど、

元来が南米の曲であるならば、メキシコのギター職人が戯れに弾いたとしても驚くにはあたらない。

フラメンコ・ギターで聴けるような、ザンバラザンザン!的な掻き鳴らしを交え、

この職人さんの弾くコーヒールンバ(というよりモリエンド・カフェ)はこれまた味のあるものだったですな。

 

ですが、どうやらこの曲はアルパによる演奏で世界に知られるようになったのであるとか。

ご存知のようにアルパという楽器はそもスペイン語でハープのことですけれど、楽器としては

オーケストラで使われているようなハープに比べると小ぶりのものが、いわゆるアルパと言われているような。

 

音はいささかキンキンするものの、軽やかで華やか、

これに比べるといわゆるハープの方はいささかくぐもった感にもつながる重厚さがあるような気がしますが、

アルパの音で「ああ、フォルクローレだなあ」と感じたりもするところでありますね。

 

そのアルパの演奏(上松美香とか)と西田佐知子の歌による両方の「コーヒールンバ」が

Youtubeで聴くことができますですよ。方やスキっとした酸味、方や濃厚なアロマ、

さていずれのコーヒールンバがお好みでありましょうや。