例によって周回遅れもいいところではありますが、先日のEテレ「らららクラシック」では
「天才×遅咲き“スペイン交響曲”〜サラサーテとラロ〜」という話でしたですね。
サラサーテが天才、ラロが遅咲き、この二人が出会ったことで名曲「スペイン交響曲」が生まれた…
とまあ、そういう話でありました。
しかしまあ、サラサーテのヴァイオリンがいかに巧みなものであったか、
そしてそれを十二分に聴かせるためには自ら作曲もしたということで(ツィゴイネルワイゼンが有名ですね)、
番組の中ではサラサーテ作曲の「カルメン幻想曲」を取り上げておりましたですよ。
そこに込められた演奏上のテクニカルな部分をクローズアップして、解説したりしつつ。
そんなことから、番組の後にはヴァイオリンの超絶技巧を聴けるCDを取り出したのですな。
ワディム・レーピンのヴァイオリンによる「Tutta Bravura」という一枚です。
いわゆる超絶技巧の曲にどう耳にを傾けたらよかろう…てな部分には以前にも些か戸惑いしたりもしたですが、
先の番組で「カルメン幻想曲」の隠れた(ヴァイオリンを弾いたことのある方には自ずと分かることでしょうけれど)
奏法上のテクニカルな点の説明を聞いて、ガチャガチャっといかにも大変そうに聴こえる箇所ばかりが
大変なのではないのだなと知ったうえでCDに耳を傾けてみますと、改めて「すげえんだろうなあ」と。
ですが、超絶技巧を聴くときの一面として、あまりにぐいぐい来られると聴いていて疲れるのも事実かと。
CDで言えばおよそ70分間にわたってひたすらぐいぐい迫られますと、
「すげ!」とは思っても、いささかげんなりもしようというところもあろうかと思うのですよね。
その点、ここでのレーピンは選曲に一工夫といいますか、
冷え冷えのアイスクリームに添えられたウエハースのように箸休め的な、穏やかな曲が差しはさまれている。
チャイコフスキーの「懐かしい土地の思い出」の中からのメロディとかワルツ=スケルツォとか、
そしてポンセのエストレリータですとか。これがあってこそ、繰り返し聴き気にもなるわけでして。
しかしまあ、それ以外のパガニーニやヴィエニャフスキの曲、そしてバッジーニの「妖精の踊り」など、
難易度の高い技を連発しているのでしょうな。
取り分け最後に置かれた「シューベルトの『魔王』による大奇想曲」は、
声色を使い分ける歌唱とピアノ伴奏とをすべてひとつのヴァイオリンで再現するという際物的作品ですが、
鉄棒でいえば離れ技の連発状態で、聴いていてハラハラ、弾いている方は息も絶え絶えでもあるような。
こういう編曲を作る、またこういう楽曲に挑戦する。常にプレイヤーは挑戦者なのですよね。
前々から何度も言っていますが、やっぱり演奏家はアスリート、音楽は体育会系でありますよ。
差し詰め音楽会鑑賞は、スポーツ観戦に等しい。
そんな部分も確かにあろうと、ここでもまた改めて思ったものなのでありました。