なかなか旅行もしにくいご時勢ですけれど、この年末年始はすっかり出不精しとりますが、
空想旅行、妄想旅行を思い浮かべるにも鉄道の時刻表は欠かせませんですなあ。
タイムテープルを見ているだけでも、夢想が広がる思いがするわけです。
そんなときに引っ張り出すのが古いトーマス・クックの時刻表でして、
ヨーロッパ各国を結ぶ主要な鉄道の発着時刻が掲載されているのでありますよ。
個人的にはあまり「この列車に乗りたい!」という気持ちは薄いので「乗り鉄」ではないのですけれど、
それでも(今でも多分そうだとは思いますが)ヨーロッパ大陸の国々を結ぶ長距離の特急列車などには、
例えばヨハン・シュトラウス号とかガリレオ・ガリレイ号ですとか、ひとつひとつに名前が付いていて、
ちとそそられるところがあったりもしますですね。
折しもTV朝日「題名のない音楽会」の、2020年最後の放送回では「鉄道を音楽で楽しむ休日」と銘打って、
「本物の機関車が手に入るなら、今までに作曲した全作品と交換してもかまわない」とまで言ったという
ドヴォルザークの交響曲「新世界より」から聞こえてくる鉄道を思わせるパッセージの紹介などがありましたな。
そんなこともあって、この年末年始に聴いていたCDは「LOCOMOTIV-MUSIK」というコンピレーション、
第1集、第2集と2枚ある中には、鉄道旅行の楽しさが伝わってくる曲が満載されておるのですよ。
しかもその曲というのが、汽車旅行が一般化した時期と流行りが重なるせいでしょう、
ワルツ、ポルカ、ギャロップとウィーンの舞踏会をにぎわしたであろう曲がほとんど。
言ってみれば、ニューイヤーコンサート2021に出かけたつもりの自宅演奏会にうってつけなのでありました。
先にふれましたドヴォルザークのように鉄道好きな作曲家はあれこれいるのでしょう、
オネゲルなどは「パシフィック231」で蒸気機関車の運行を曲に再現したりしているわけですが、
こちらのCDでは(汽車の発する音の模倣もないことはないですが)もっぱら鉄道の旅の楽しさが
ひしひしと伝わってくるのですなあ。
曲の調子が快速で、快活なメロディーからも乗っている人々の笑顔が浮かんでくるような気さえします。
それがいったいどうしてなのかを考えるに、蒸気機関車の速度が関係しているのではなかろうかと。
それまでのどんな乗り物にもないスピード感、さぞや「乗っている」ことで得られる愉悦感があったことでしょう。
かといって、現代の新幹線や、はたまた飛行機ではおそらく速きに過ぎるというところかもしれません。
場合によっては窓を開け、風を切って疾走するさまを新幹線や飛行機では危なくて体験できないわけでして。
ですから、ほどほどの速さ(といっても、当時に人には驚くべき速さですが)こそがいい。
ここでもさ過ぎたるは及ばざるがごとしなのではなかろうかと思うところです。
日本でも、真岡鉄道や秩父鉄道、大井川鉄道などで蒸気機関車は動態保存されていますし、
ヨーロッパにもあまたの動態保存鉄道がありますけれど、現代でかなり重きをおかれる速さの点で
相当に見劣りする蒸気機関車に根強い人気がある理由は、このあたりにもあるではないでしょうか。
ああ、なんだか北ドイツのバート・ドーベランやリューゲン島のSLに乗りに行きたくなってきましたなあ。
乗り鉄でないと言ったにもかかわらず…(笑)。