2020年の新聞記事から個人的に目をとめたものはやはり時事ネタは少ないですが、
振り返りはも少し続きます。
【2020年6月20日(土)/毎日新聞】
見出しは「「鎖国」の島国 経済より命」、さらに「コロナ感染者ゼロ パラオの選択」と。
コロナ騒ぎが始まってしばらく岩手県で感染者確認無しが続いておりましたが、
6月段階で南の島パラオもまた感染者はゼロだったですなあ。
その後どうなったかと探ってみれば、駐日パラオ共和国大使館の12月21日付発信によれば
国内感染者数0名、感染疑いのある患者数0名と出ておりましたですよ。
水際対策どころか、完全に水際をブロックする鎖国政策が続いているようです。
もともと観光立国でしょうから、自らの側でそれを止めることは文字通りに死活問題と思いますが、
「パラオやサモアのような島嶼国の住民は歴史的に疫病にさらされた経験が少ないため、
感染症に対する抵抗力が弱いとされる」となれば、まずは何より命を守るということに。
駐日大使は「経済は重要ですが、パンデミックを乗り越えればまた再建できます。
人命は一度失われたら再生できません」と、言っておりましたなあ。
とにもかくにもまずは食べることとして、互いに融通しあいながら自給自足的な対応も
住民の間では自発的に行われているようで、これを日本とは環境が違うと言うは易いですが、
複雑化した社会構造であるがゆえのトラブルへの弱さが露呈しているのではないでしょうかね。
終息までの期間が長ければパラオもまた大変でしょうけれど、
乗り切ってひとつのモデルを示してほしいものです。
【2020年6月28日(日)/朝日新聞】
「民主主義は限界なのか」というタイトルのもと、マキャベリを取り上げていたのですね。
マキャベリといえば『君主論』(読んだことはないですが…)、そして印象としては
権謀術数を奨励している人のようにも思ってしまっておりましたが、どうやらそうでもなさそうで。
そもそも『君主論』は当時のメディチ家のためにこそ書かれたものであって、
一般的な政治論であるかのように受け取ること自体が誤解なのであるということなのですね。
メディチ家はお膝元のフィレンツェなればいざ知らず、
「ローマ教皇からイタリア・ロマーニャ地方諸国の統治を委託される見通し」があり、
このロマーニャ地方では「暴力や策略を用いて抵抗勢力を一掃しなければ」
とても統治しきれないという紛争地だったとか。
そうした場所に臨むメディチ家に向けたメッセージであったというのですなあ。
ですから、むしろフィレンツェを統治するという点に関しては
「事実上、市民の自由を保障する共和政を勧めてい」るのだといいますから、
思い込みで出来上がったイメージだけで見ているのは誤りのもと。
このことはどんなことにも忘れてはいけんことのようではありますよ。
【2020年7月5日(日)/北海道新聞】
これまた日曜版のシリーズ「時を訪ねて」からですけれど、取り上げられているのは「日本最古の鉄道」。
そんなの新橋・横浜間に決まっているではないかと思うわけですが、
実は明治5年(1872年)に汽笛一声、新橋を汽車が走り出す2年前、
すでにその鉄道は北海道で走り始めていたというのですな。
その名は茅沼炭鉱軌道、そもそもは江戸幕府が着工したというだけでも
やはり日本最古!と思うところながら、その実態を説明されてしまうと「う~む」とは思うところでして。
山中で採掘した石炭を港まで運ぶのがこの鉄道の役目ですが、
山から海へと向かう方はおそらく全行程に傾斜があったのでしょう、
動力無しで貨車が滑り降りていくような恰好ですね。
反対に貨車を坑口まで押し上げるのは牛に引かせたのだそうです。
こうなってきますとこの鉄道のイメージに「うむむ」感が生じるわけながら、
それでも日本の鉄道黎明期の一ページを飾るものであるのですから、も少し知られていいのかも。
それがひたすらに日本の鉄道は新橋から始まったといったことばかり喧伝されるのは、
どうも明治史観に類するものであるかとも思ってしまったのでありましたよ。