年末ですなあ。新聞では例によって今年を振り返った十大ニュースてな企画ものが掲載されたりしますけれど、

こちらは同じく2020年を振り返りつつも、いささかも十大ニュースでない個人的食いつきのあった新聞記事を並べようかと。

 

夏頃までは地方紙を結構見る機会があったことから、そんなものも取り混ぜていこうかと思いますが、

種を明かせば「この記事のことはも少し思いを巡らして、そのうち何か書こう」と思ったものが、実は溜まっており…。

時事的なものはほとんどありませんので、今年を振り返ると言うにはそぐわないところでもありますけれど、

それはそれとして早速に並べて行ってみるといたしましょう。

 

【2020年4月20日(月)/新潟日報】

「名ぜりふで読み解く日本史」というシリーズ記事の最終回は足利尊氏のひと言でありましたよ。

曰く「この世は夢のごとくに候」と。「争いに嫌気差し出家図る」と見出しにありますように、

鎌倉時代に幕を引き、室町幕府を打ち立てた武家の棟梁と思うところが、この醒めたひと言は印象的ですな。

 

後醍醐天皇に反旗を翻し、対立する天皇を立てて南北朝の争いが続くことになったわけですけれど、

昨今の研究ではひとえに後醍醐天皇の疑心暗鬼によるもので、尊氏は常に天皇のためにという姿勢を崩さなかったとか。

それがちいとも分かってもらえず、挙句に逆臣呼ばわりされることにほとほと嫌気が差してしまい、先のひと言に。

 

この言葉に続いて、自らは仏門に入り、後のことは弟の直義に…とあるようでして、

歴史はかつて教科書に書いてあったからとそのままに信じ込んでいると、びっくり仰天させられることは

他にもいろいろありましたなあ。知ったかぶりをしていますと、足元をすくわれる元なのですよね。

 

【2020年5月10日(日)/北海道新聞】

北海道新聞・日曜版の「時を訪ねて」というシリーズは、結構興味を惹かれる内容が多いような。

この日の記事は、1931年に「日本から米国本土までの初の太平洋無着陸飛行に成功」したことについてのお話。

ふたりの米国人飛行家に操縦された「ミス・ビードル号」という飛行機が、青森県三沢の海岸を滑走路として飛び立ち、

その関係でしょうか、青森県立三沢航空科学館には機体のレプリカが置かれてあるのだそうな。

 

ですが、実はこのふたりのパイロット、世界一周飛行の最短記録を目指していたのが、どうも思ったようには進まず、

ニューヨークから東回りにハバロフスクまで到着したときに、日本の新聞社が太平洋無着陸飛行に懸賞金を出すと聞き及び、

急遽これに乗っかったということでもあるらしい。

 

逸話として面白いのは、このとき三沢を飛び立った飛行機が太平洋を越えて到着したのが米国西海岸、

ワシントン州のウェナッチというところ。なんでもリンゴの名産地であったそうなんですが、この成功を縁として

ウェナッチから青森にリンゴの苗木が贈られたというのですね。今でこそリンゴといえば青森ですが、

その発祥はアメリカから贈られた苗木であったとは、全くもって思いもよらずでありましたよ。

 

【2020年5月16日(土)/新潟日報】

「日本近代化支えた阿賀」という見出しのもと、草倉銅山の紹介が載っておりました。

新潟県阿賀町には大きな銅山があったそうなんですが、古河市兵衛の経営によって

明治16年(1883年)には「国内第2位の産銅量を誇るまでになった」とか。

 

ここでの儲けでもって古河は足尾銅山の開発を行ったと聞きますと、

微妙な印象につながることになってきますが、そも草倉銅山自体、阿賀野川流域にあるとなれば、

新潟水俣病はここから?と考えてしまうところでもあろうかと。

 

実際は廃坑となったのち、同地にできた肥料工場によるアセトアルデヒドの生産であったそうですが、

日本の公害の歴史がここまで凝縮されている場所があろうとは、なんと申しましょうか…。

 

【2020年5月20日(水)/日本経済新聞】

「日本のテクノスケープ」というシリーズ記事ですが、東京都奥多摩町の景観を取り上げておりましたよ。

奥多摩といえば、東京随一の自然景観を思うところですけれど、ここでは「工場萌え」的な紹介なのでして。

 

奥多摩の山間、マス釣りもできる清流・日原川の奥に、忽然と姿を現す大工場。

あたかもレトロSF的なる世界が現出したかのように見えるところには「萌え」を感じる人もおられましょうね。

今ではJR青梅線と呼ばれる鉄道が開通したのは、そもそもこの山奥から採れる石灰石を運搬するためであったと。

 

青梅線で立川へ、立川からは南武線で工業地帯である川崎へと路線をつなげたということなわけですが、

銅山のような害をもたらすものでなくて、よかったですなあ。おかげで、都民は他県に出るなという風潮の中では

自然貧乏の都会人に潤いをもたらす奥多摩であり続けているわけでして。

 

【2020年6月17日(水)/北海道新聞】

今では誰もが知っていることとしてクローズアップされることも無いですが、6月段階ではまだこんな見出しも。

コウモリは「病原体の貯水池」 新型コロナウイルスも由来

この記事では、新型コロナウイルスのほかにも、SARS、MERS、さらにはエボラ出血熱までが

コウモリ由来のウイルス感染症と紹介されておりましたなあ。

 

こうなってくると、どうにもコウモリが悪者になってしまうところですけれど、

コウモリ自体は「免疫の働きが活発なため、多くの病原体を症状が出ないまま体内に持つことができる」そうな。

ですので、コウモリにといっては何ともないウイルスであるわけですね。

 

それがなんだってヒトのほうにやって来てしまったか?となれば、もともと人里離れた場所にいたものが

「自然破壊や開発で家畜など人間に近い動物と接するようになり、そこから人間にうつるケースが多い」と聞けば、

つまるところ、結局は人間が蒔いた種の結果を引き受けざるを得ないことになったのでもあろうかと。

 

悪者探しの結果は、めぐりめぐってブーメランのように自分のところに返ってきてしまう。

今現在の状況を改善する役には立たない情報かもしれませんけれど、

この後にも今回のようなことが再来するのはご免蒙りたいと考えるのであれば、

人間としては気にかけておかなくてはならないことなのではなかろかと思ったものでありますよ。

 


 

とまあ、実にとりとめのない備忘録のようなものになってますが、

取り敢えず長くなりましたので、今日のところはここまでにして、もう少し続くということで。