ちょいと前、ケテルビーの作品集を聴きました折にNaxosレーベルのCD紹介文を引き合いに出しましたが、

その中にはこんな一文もあったのですね。

小学校の音楽の時間の必須ナンバー「ペルシャの市場にて」を作ったケテルビーこそは、ルロイ・アンダーソンと並ぶ軽音楽界の神様なのです。

ということであれば、ルロイ・アンダーソンのCDを久しぶりに取り出してみようかいねと。

レナード・スラットキン指揮セントルイス響による「タイプライター ルロイ・アンダーソン・フェイヴァリッツ」という一枚です。

 

 

ルロイ・アンダーソン作品ばかり、何と25曲も収録されているとは、どれも小品であることが知れようというもの。

全ての曲が4分以内で完結するコンパクトさと、時に親しみやすく、時にキャッチーなメロディーが人気の元でもありましょう。

 

そして、先の紹介文ではケテルビーとアンダーソンを並べていましたけれど、歴とした違いとしては

アンダーソン作品が「いかにもアメリカ」を思わせるものであること。思い浮かぶのショービジネスの世界だったりしますしね。

まあ、古き良きアメリカかもしれませんですが…。

 

クリスマスの時季にはどこかしらから必ず聞こえてくる「そり滑り」などは、

改めてフルオーケストラで聴きますとなんともゴージャスなサウンドではなかろうかと。

これまた有名な「トランペット吹きの休日」あたりは音楽の「サーカス」でもあろうかというわくわく感を湧き起こしますし。

 

Wikipediaには「作曲家ジョン・ウィリアムズは『アメリカ軽音楽の巨匠』と評している」てな記載がありますけれど、

オーケストラ・サウンドがもたらすゴージャス感へのこだわりをジョン・ウィリアムズに植え付けた要素のひとつかも。

先ごろ、Eテレ「らららクラシック」でジョン・ウィリアムズが取り上げられてましたけれど、

いずれもアメリカらしいところなのではと思ったものでありますよ。

 

また、楽器使いにも独特なところがありますね。「ワルツィング・キャット」という曲で

「みやぁお~、みやぁお~」と鳴き声を模すようなことは他の作曲家も思いつくであろうものの、

CDタイトルに使われた「タイプライター」では、事務用品として実用一点張りのはずのタイプライターそのものを

楽器として、それも独奏楽器として使うとは大した思いつきですなあ。

 

オーケストラ作品で作曲家はパーカッション・パートにいろいろな音を求め、

例えばマーラーはカウベルを鳴らさせたり、木槌をぶったたかせたりしてますけれど、

アンダーソンの場合、「サンドペーパー・バレエ」ではいわゆる紙やすりを楽器にしてしまうように、

決して効果音では終わらない扱いをしているところが、何ともユニークなところではなかろうかと思うわけです。

 

と、アンダーソン作品のキャッチーなところばかりを取り上げてきましたですが、

「Forgotten Dreams」のようにゆったりとして郷愁を誘うようなメロディーもあることは忘れてはいけんような。

こうした曲調の作品も残した上で、アメリカ軽音楽の「神様」であり「巨匠」であるのでしょう、ルロイ・アンダーソンは。

聞き流してしまうにせよ、折り触れて耳にしたくなるライトミュージックですが、ルロイ・アンダーソンもまた、でありますね。