どうした加減であるのか、訃報が次々と舞い込んで…。

件のウイルスとは関わりなく、90代、80代、70代とそれなりに年齢を重ねた結果ではありますが、

今のような状況では葬儀に連なることも叶わず、もとより喪主の側からも内々でという話が伝わってきました。

 

ですので、せめて御香典を郵便で送るくらいのことをしたわけですけれど、

先ごろその、いわゆる香典返しの品が送られてきた中に、

葬儀に似つかわしくないと思われる祝儀袋が入っているものがあったのですなあ。

 

お年玉を渡すときのポチ袋ほどの小さなものですけれど、紅白の水引が印刷されているところは

明らかに慶事用ではななかろうかと。そして、袋には「長寿銭」と印字されておりましたよ。

 

「長寿銭」(ちょうじゅぜにと読むらしい)とはいったい?と思い、調べてみますと、

群馬、埼玉と千葉の一部に見られる風習のようでありまして、

要するに長生きできてありがとう、この御縁をみなさんにもおすそ分けで…というようなことらしい。

 

ですが、関東の一部に住まって長いものの、この「長寿銭」に接したのは今回が初めてだったのですね。

こうした風習があることを知りませんでした。

 

が、知らなかったからといってさほどに困ることではないわけですけれど、

たまたまにもせよ、近頃「知らなかった…」と気付かされたことがいくつかありましたので、

さしたる話でもないことながら、ちとまとめて記しておこうかなと思ったようなわけでして。

 

たぶん何かしらの映画を見ているときだったかと思いますが、

日本語字幕に「仮り初め」という言葉が映し出されたのですなあ。

 

即座にこれは「かりそめ」と読むのだということは分かりましたけれど、

「かりそめ」という言葉に当てる漢字がこうであるとは知らなかったものですから、

新鮮というか、違和感を抱いた次第です。

 

なんとなれば、その意味するところを思い浮かべるに、

「仮」は想定内としても「初め」の方は意味合い的にどうも馴染む気がしなかったものですから。

それでも「かりそめ」と打って変換すると、直ちに「仮初め」「仮初」と出るのですよねえ。

 

そこでやっぱり調べてしまうわけでして、結果として「仮初め」とは

元の言葉に当て字があてがわれたものであるらしいという解説に行き当たりました。

それによりますと、元々の言葉は「仮染め」、あるいは「仮様(かりさま)」であったそうで、

仮に染めてみる、あるいは仮のようす、つまりは一時的という意味がここから出てくるわけです。

 

これが(場合によって音の変化も伴いつつ)別の当て字が使われて現在に至っているということですが、

どうでしょうか。元から「仮初」であると言われるよりは得心できそうな気がしましたですよ。

 

と、言葉の変化のようなあたりのお話をもうひとつ。「さびしい」と「さみしい」の関係であります。

用法としては両者の間のニュアンスの違いが暗黙の了解のように意識して使われているものと思いますが、

元々は昔々の「さぶし」に由来するとなれば、ニュアンスの違いは後付けなのではなかろうかと。

 

まず「さぶし」が「さびし」に変化し、その後「さみし」が生まれた。

どうやら「ば行」の音と「ま行」の音には交替が起こりやすいという特性?があるようで、

昔は「けぶり」と言われていたものが、いつしか「けむり」で一般化するとかいうのも

同じことなのだそうでありますよ。

 

と、言葉の話ばかりではなんですので、

世の中に話題に疎い者ならではの他愛もない「知らなかった…」をひとつ。

CMで見かけたことのある人にとっては「知らなかったもないものだ」でしょうけれど、

亀田製菓の「柿の種」のお話です。

 

「柿の種」という名の米菓は亀田製菓オリジナルではないでしょうし、

実体としてピーナッツが混在して売られているので「柿ピー」とでもいうのがより適当なのかもしれませんが、

この柿の種とピーナッツの配合割合が、2020年6月をもってこれまでの「6:4」から「7:3」に変わるという。

 

もちろん変わるということも知りませんでしたが、元々の割合が「6:4」の比率であることもまた知らなかった。

でも、そのことがどうなんだ?!となりますれば、当然のごとく味わいが変わることになりますね。

割合を変える根拠になっているのが、亀田製菓が「ベストの割合」を問う投票を行った結果であると。

 

でもって、その投票には25万余りの票が投じられたとは、

柿の種の配合バランス、ひいてはその醸し出す味わいへのこだわりを持つ人がこんなにいたのですなあ。

知らなかった…。この関心がもそっと別の方に向いていたとするならば…とは、考えても詮無い話でありますな。

 

まあ、かような話で終わってはちとあんまりですので、もうひとつ。

亀田製菓といえば新潟の会社で、それで思い出したことですけれど、

このところ、いろいろと地方紙に目を通す機会がありまして、先日の新潟日報で見かけたことを。

 

長久保赤水という人をご存知でありましょうか。江戸時代の地理学者ということなのですが、

伊能忠敬よりも42年も早く精度の高い日本地図「赤水図」を作った人物だそうで。知りませなんだなあ。

 

新潟日報だけに新潟の人かと思えば、今の茨城県高萩の人であると。

伊能忠敬は海岸線の実測に基づいて「日本の形」を精細に描き出したものの、内陸部がスカスカだったりする。

これに対して「赤水図」は「自分で集めた地名などの情報を地図に盛り込んだため、内陸の情報も豊富」とか。

吉田松陰なども、旅をする際には大いに「赤水図」を役立てていたということでありますよ。

 

焦点の当たる人の陰にも、同じ分野で活躍した人はいるわけで、そうした人物の存在も忘れてはいけんような。

とにもかくにも、知らないことが山のようにあって…。