てっきり地味に作られたものであろうと思っておりましたら、実はそうでもなかったようで。
映画「THE PROMISE 君への誓い」は結構な製作費をかけてアメリカで作られたのですなあ。
オスカー・アイザックやクリスチャン・ベール、ちょい役ながらジャン・レノ、ジェームズ・クロムウェルも出ている。
逆に言えば、地味だけれど渋い作りであるかという予想もまた覆されたというべきかも。
そもそも物語の背景は第一次大戦時に当時のオスマン・トルコで起こった組織的なアルメニア人虐殺なのですけれど、
オスマン帝国はもとよりその後のトルコ共和国でも、今に至るもこの事件が組織的に行われたものとは認めていないわけで、
これを「組織的な虐殺があった」ことを前提に描き出すということは、いわば外交問題になったりするのでは…と思うにつけ、
地味に作られたのかなとも考えた次第でありますよ。
ですので作り手の側にも臆するところがあったのでは思うところながら、Wikipediaに記載のありますように
「本作の製作費9千万ドルの大半は、虐殺から生き延びた家族を持つアルメニア系アメリカ人の大富豪
カーク・カーコリアンが個人的に捻出したものである」ということで、
トラブルを懸念して製作費を出すのに二の足踏まれるてなことがなかった、じゃあ作れるとなったかもです。
ちなみにカーク・カーコリアンという人、ファミリーネームのおしまいが「~アン」とか「~ヤン」とかは
アルメニア系に多くみられるだけに正しく、という感じですが、
ラスベガスのリゾート開発に関わった事業家で相当な大金持ちだったようです。
一方、トルコの側ではアルメニア人虐殺があったことを正式に認めてはいないものの、
多くの時に流れた今となってはひたすらにだんまりを決め込んでいるわけで、
ここで大騒ぎするとこれまでに世界各国からの囂々たる非難をまた呼んでしまうのではと考えたかもしれませんな。
ま、そんな想像もしながら映画を見たですが、この際、ストーリーがどうのというよりも
こうしたことが歴史の中に埋もれかかっていると知る意味はあるのではなかろうかと。
そして、第一次世界大戦が「第二次よりもさらに前」ということですっかり歴史化して
例えばサラエボ事件といった断片しか記憶されなくなっていく中で、
実は大きな歴史の転換点であったことに、今さらながら気付かされるといった点でも。
何しろ、あれほど過去に戦いあったオーストリアとオスマン・トルコが同じ側に立って戦い、
いずれも敗れると、広大な多民族国家が見事に瓦解するのですなから、
ある意味、その後の歴史の出発点的なところもあるわけですし。
ところで、この映画が描いたような虐殺を見ていると、どうしてこういうことが起こってしまうかなあと思いますね。
差別が無くならない背景には、そもヒトには他と違う優越性を感じたがるところがあるのであるか…と、
考えてしまうのでありますよ。
