房総半島を目指して神奈川県側から東京湾アクアラインを抜け、千葉県に入りました。
が、そのまま海に沿ってとはいかず、繋がっている圏央道で千葉の内陸部へ向かうことに。
木更津市街はあっというまに過ぎ去り、気が付けば山の中。
千葉といえば首都圏とはいえ、その深奥部に向かうとたちどころにこうなるのですなあ。
さしあたり目指していたのは市原湖畔美術館という、プチながら個性的なと評判の(?)美術館。
ではありますが、向かう道々には見かけるのはどれもこれもゴルフ場の看板ばかり。
ところによっては、こんなにゴルフ場が案内されておりましたですよ。
千葉県は思った以上に山がち(今回廻って、その思いを強めることになりました)なのですが、
決して高い山が無い丘陵地がつながるようなところですので、ゴルフ場にはうってつけなのかも。
(ちなみに県内最高峰は標高408mの愛宕山で、都道府県別最高峰で最も低いとか)
その分、それ以外の一般向け観光としては魅力が伝わりにくいところがあるような気もしますですね。
と、そのような千葉県内陸部を進んでいって到着した市原湖畔美術館は、
てっきり市原湖てな湖のほとりにあるのかと思いきや、湖の名は高滝湖であるそうな。
ですので、市原湖のほとりでなくして、市原市のさる湖畔にある美術館てなことでしょうかね。
とまれ、かような市原湖畔美術館はなかなかにユニークな建物です。
「既存建物の仕上材を全て剥がしてコンクリートの構造体だけを残し」たという、
その建物自体がアートのようでもありますね。
「サイトスペシフィック・アート~民俗学者・宮本常一に学ぶ~」というのが
訪ねたときの展覧会(会期は1月13日で終了しています)ですけれど、
浅学にして宮本常一という民俗学者を初めて知ったのでありました。
民俗学といいますと、各地を訪ねてそこに埋もれてしまいそうになっている、
はたまた忘れ去られようとしている文化的側面などを記録にとどめ…てなことを思い浮かべるも、
宮本のスタンスは現地の記録をとどめるというよりも、現地とともにあるとでもいいますか、
ずいぶんと独自のアプローチであったのではなかろうかと。
そんな宮本に関する展示も興味深いところではありましたけれど、
そこここに置かれた造形作品がまた面白い。前庭にも作品が点在しているのでありますよ。
それぞれユニークで興味深いところですが、上の方の湖畔の写真でご覧になれる鉄骨製めいた展望台、
実はこれもアート作品だったのですなあ。
作品名(というのかどうか)は「藤原式揚水機(展望塔)」と。やはり展望塔であるのは副次的であるような。
そも「地域で使われていた農業用水を汲み上げるための揚水機を模したオブジェ」ということで。
地域に関わりのあるものがオブジェという形を変えたものになって、なお地域に溶け込む。
近年は「え?ここで?」というような山里でアートフェスティバルが開催されたり、
そうでなくても思わぬインスタレーションが忽然と現れたり…てなことがありますけれど、
それがその地域らしさをまとって溶け込んでいるとすれば、
これもまたアートのありようであるなあと思ったものでありますよ。
そういえば、館内で見た「サイトスペシフィック・アート」の考え方にもそうした側面はありましょうなあ。