と、INAXの前身である伊奈製陶ではテラコッタ
も焼いていたわけですけれど、
建築物の外壁装飾といってもテラコッタは部分的なアクセントとして使われていたわけで、
コンクリートの壁面の多くを覆うためにはたくさんのタイルが使われたのでもありますね。
で、大量生産が求められたタイル需要に対応すべく使われたのが
「トンネル窯」というものであるということで。
トンネル窯というのは「連続焼成タイプ」の窯だというでして、
ここに再現されているのは16mしかありませんけれど、
現物は全長80mもある長い長い窯だというのですね。
予熱帯、焼成帯、冷却帯という3つのゾーンで構成されたトンネル窯は、
内部に敷かれたレールの上を台車が予熱帯から冷却帯に向けて
徐々に(1分間に数センチだとか)移動していくことで、
大量のタイルを連続的に焼き上げることができるものであるそうな。
本来は別の工場で使われていたこの窯をライブミュージアムの敷地内に再現するにあたって
実物どおりに全長80mのままに移築するという考えもあったようですが、
大きすぎるということで結果は部分的に16mのみ。残念ですな。
80mが再現されて中を通り抜けられていたら、
じわじわと焼きあがる感じがよおく分かったのではと想像するわけですけれど、
実際に製品を載せた台車はトンネル内を2~3日かけて通り抜けるということですから、
まあ、タイルの気持ちにはなれませんですけどね。
ちなみにトンネル窯には「ローラーハースキルン」という進化形があるようで
窯の中をセラミックローラーで製品を移動させることで数時間で仕上げてしまうとか。
トンネル窯がじっくりじわじわだったのは、運ぶ台車の耐久性(耐火性)みたいなところも
関係していたのかもしれませんですね。
とまあ、かようなトンネル窯ですけれど、
まさにこの窯で焼かれたタイルが新宿NSビルの外壁に使われていると聞きますと、
俄かに「ああ、あれね!わかるかわる」てな具合に少々身近感が出てたりもして。
同様にここのタイルは鹿児島県庁、神戸税関、名古屋の日生笹島ビルなどにも
使われたということですので、地域によってそれぞれに「ああ、あれね!」と思う向きが
あるかもしれませんですね。
ということで、焼成帯では一般的に1200℃くらいに設定されるという
熱い熱いトンネル窯の話をしてまいりましたですが、
それにしても毎日暑い日が続いておりますなあ。
毎度申し上げておりますとおりに、強烈な西日に照らされる住まいにあっては
もはやへろへろの状態。急遽、空きを見つけた八ヶ岳の宿でちと骨休めしてまいります。
ま、帰って来てからなおさら暑さが身に染みることになるやもしれませんですが(笑)。