では改めて「世界のタイル史を語る上で代表的なタイル約1000点」の展示へと向かいます。
そも壁面装飾
としてタイルに繋がる歴史の始まりは紀元前数千年のメソポタミア、エジプトで…とは
先に1階展示室で見たとおりですので、その辺りのことはちと端折りつつ。
展示には紀元前2000年以上も前の日干し煉瓦や焼成煉瓦などもありましたけれど、
よりタイルらしいところで、古代のものはとりあえずひとつ、施釉煉瓦を見ておくことに。
有翼の人面獣身像とはいかにもメソポタミアっぽいふうであるかと。
紀元前8~7世紀のアッシリアで作られたものということですが、
釉薬を用いて図柄を描き出すとは装飾タイルの先駆けでありますなあ。
こうした装飾性あるタイルがメソポタミア周辺エリアでもって、
イスラム文化とともに花開いていくのですよね。イランもタイル王国であったようです。
銅で青に発色させた青釉タイル、「錫釉の白いベースの上に、銀や銅の化合物を混ぜた釉薬で」
金属の光沢を再現しようとしたラスター彩タイル。イスラムは化学が発達していたと聞きますが、
それがタイル作りにも活かされていたのでしょう。かような陶板画まで作られますし。
一方、イスラムといえばアラベスクですな。
16世紀ごろのトルコではかようなタイルが作られていたようですね。
また、イスラムの文化はスペインにも入っていきますな。
そこに他所からの影響も混然となってマジョリカという錫釉色絵陶器の技法による
色鮮やかなタイルが貼ってるすることになるようです。
スペインにたどり着いたものがオランダに伝わるのは歴史の常でありますね。
ただスペイン以上に大きく貿易を展開したと思われるオランダだけに
中国の染付の影響を受けて白地藍彩のタイルが作られ、人気となる。デルフト焼ですな。
青が特徴とばかり思っていましたが、白地藍彩タイルの変形として
錫釉の白地にマンガン紫で彩画した白地マンガン彩タイルというのも出回ったとか。
デルフトのタイルがヨーロッパじゅうに輸出されるようになりますと、
負けてはおられじとイギリスが「イングリッシュ・デルフト」なるものを作り出したようで。
始まりはまねっこですが、やがてタイルが大きく花開くのもヴィクトリア朝のイギリスでした。
アーツ・アンド・クラフツ運動もタイルに関わるわけですが、デザインばかりに
工夫が凝らされたのではないのですなあ。こちらはストーブタイルと言われるものだそうで。
裏側に厚い空洞を持たせたタイルで、これを暖炉に貼って保温性を高めてあるそうな。
もちろん見た目を飾る目的はありましょうけれど、それだけではなかったのですなあ。
という具合に、あれこれのタイルを見てきましたが(中国、日本の部はちと割愛で…)
タイル技術は彩色をどんどん進化させ、先にイランの陶板画を見たように
実用品とばかり言っていられない作品も出てきますですね。
考えてみれば、陶板画といって大塚国際美術館
で見る作品などはその最先端でもありましょう。
ですが、ここでは最後に19世紀ドイツで製作された陶板画を紹介しておくといたします。
そのクリアな画面(陶板ならではでもありましょうけれど)に見入ってしまったものですから。
いやはや、改めて「たかがタイル、されどタイル」でありましたなあ。