学校で授業の始まり、終わりにキンコンカンコンと鐘…というよりチャイムが鳴りますが、
通勤途上でふと耳に届いたのはそのメロディー、お母さんに手を引かれた男の子が
どうやら口ずさんでいるのでありました。
キンコンカンコンと行って、キンコンカンコンと戻ってくる。
その男の子はこのメロディーの前半部分を口ずさんで見事に再現していたものですから、
「耳がいいのかな」と思ったとたんに聞こえてきた後半、戻りの部分。
これがなんとも音程を外しまくりだったのでして、
昔風のコントのようにズッコケてしまいそうになりましたですよ。
とまあ、かようなひと幕に接して、はて?と思ったことには
あのキンコンカンコンには元々のオリジナル曲でもあるのかいね…ということ。
調べてみれば「おお、タイトルまでちゃんとあるのだあね」ということが分かりました。
ま、タイトルとまでは言えないかもですが、「ウエストミンスターの鐘」と呼ばれているようです。
英国ロンドン
のウエストミンスター宮殿の時計台、要するに「ビッグ・ベン」の鳴らす鐘の音が
件のキンコンカンコンだものですから「ウエストミンスターの鐘」というらしいですが、
実際にはビッグ・ベン用に作られたメロディーではなくして、
ケンブリッジのグレート・セント・メアリー教会の鐘の音として採用されたのが始まりとか。
ビッグ・ベンで鳴り始める60年以上も前、18世紀末のことだそうでありますよ。
ところで、折しも先ごろ放送されたEテレ「地球ドラマチック」
では
「ビッグベン 世紀の大修復プロジェクト」を取り上げておりましたなあ。
2017年から4年を掛けて大修理をするとかで、その準備段階のドキュメンタリー。
番組を通じて、またいろんなことを知ることができました。
例えばですが、「ビッグ・ベン」というのは例の時計塔のことではなくして
時を告げるために鳴らされる大きな鐘を指していると。
塔の方は「エリザベス・タワー」という名称であるそうな。
建造されたのはヴィクトリア朝
だったのですけどね。
時計のメカニズムは当時からの機械式。
どうしたって時を刻む精度が上がった現代から比べれば、
明らかに旧式とはいけましょうけれど、番組レポーターの曰く
「これが電気仕掛けで動くようになってしまったら…」と、
その時はもはや「ビッグ・ベン」は「ビッグ・ベン」ではなくなってしまうてな
思いでもあったようす。ロンドン子の気持ちを代弁しているのかもです。
そんな思いがあらばこそ、微妙な時刻合わせは振り子状に動いている小さな部品に
コインを何枚か載せたりすることで重さの調整を図り、引いては時刻を正確に保つという
実にアナログな手法を取り続けているようです。
またそうした対応が必要な機械式のメカニズムを
修復することで使い続けようとしている。 そのためには
相当な費用(国家予算)が投じられることになりますが、 それでもなおな。
スクラップアンドビルドばかりがやりようではないということでありますね。
とまれ、ビッグ・ベンでは1859年以来この方「ウエストミンスターの鐘」が鳴っていることから、
時々に鳴る鐘を耳にすることは生活の一部にもなっているであろう、ロンドンの人たち。
修復開始にあたり、いよいよビッグ・ベンの鐘が止まるという世紀の瞬間?には
たくさんの見物人があたりを埋め尽くしもしたようで。
思い返して気付いてみれば、ヴォーン・ウィリアムスが作曲した二番目の交響曲にあたる
「ロンドン交響曲」には「ウエストミンスターの鐘」の引用が聞かれますね。
作曲されたのは20世紀初頭で、ビッグ・ベンが鳴り始めて50年も過ぎますと、
これこそロンドンらしい雰囲気を伝える術と考えたのかもしれません。
そのビッグベンが大々的な化粧直しを経て再びなり始める2021年とのこと。
それまでの間はロンドンを訪ねても、足場に取り囲まれて沈黙するビッグベンの姿を
見ることになるのでありましょうなあ。