どうやらNHKで放送したものようですけれど、
池井戸潤の小説をドラマ化した「鉄の骨」全5話を見終えたのでありますよ。
ゼネコン業界にあって常に取沙汰される談合を取り上げた作品ですけれど、
劇中にも出てくる会話として「談合って犯罪でしょ」というものがありまして。
確かに刑法96条の6の第2項に該当するとなれば、
「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と
定められていますので、犯罪であることは間違いないわけですね。
にもかかわらず、リニア中央新幹線に関する談合があったとして
大きく報道されたりしたのは記憶にも新しいところかと。
犯罪に当たると分かっていても、建設業界ではこれをやめることができない。
話の中には「必要悪」といった言葉も聞かれたのですなあ。
「必要悪」を理解するときにはどちらかと言いますと、
「必要かもしれないけれど、悪いことは悪い」という方向ではなくして
「悪いことではあろうけれども、必要なのだ」といった受け止め方がされるのかも。
大手ゼネコンで建築設計に携わることを希望していた主人公の考え方は
おそらく前者であったものと思われますが、どうした加減か配置転換があって
異動した先は土木関係の営業課、つまりは談合課とも言われるような部署へ。
当初は全くもって馴染めないわけですが、
同業他社の同種の人たちとも関わりながらだんだんと考えは後者に移っていくのですね。
この辺り、見ている側まで少々の揺らぎを感じてしまうほどに談合に関わる人々の思いは
はっきりしており、「必要悪」以上に「知恵」であるとまで言ってしまうという。
談合ありきの枠組みの中で長らく構築されたものを
壊さないことに一所懸命になっているわけですが、そもそも犯罪とされるようなことが
必要とされてしまうことの根本原因があることは分かっていながらも、
そちらの方に自分たちで手を付けることは出来ないということなのでありましょう。
そうした根本的な原因の中には、
巨大な公共事業プロジェクトを発注する側(国などですね)の問題があったりすることは
よく言われることであって、そこらへんを正すのは受注者たる建設会社には困難なこと。
にも拘わらず単純に「談合は犯罪です」と言ったところで、話は片付かないというわけですね。
不正のトライアングルと言われる「動機」、「機会」、「正当化」の3要素は
これが揃うと不正が起こりやすいということになりますけれど、
談合に関わる人たちの中では「正当化」がおそらく盤石なのでしょうね、きっと。
その「正当化」を意識しやすくしている背景に迫らなければ、
「談合はだめだ、無くせ」と言い続けたところで根絶には至らないのかも。
談合に関わる会社は、盗癖があってついつい万引きしてしまうようなこととは違い、
ついうっかりなんつうことはないわけですから、せざるを得なくしている要因に
切り込んでいかなければ、いたちごっこは続いていってしまうのかもしれません…。