と、ザーンセスカンス に立ち並ぶ風車を見て思うところ…というお話になりますですが、

なにもオランダでなければ風車が見られないわけではありませんで、

昨年ブルッヘ(ブルージュ) でも見ましたし、他の国でも見ることはできましょう。


ですが、見てくれのどっしりした、いわゆる風車らしい風車は
オランダで見かけるものがいちばんのイメージに適うものと思いますし、
何より数が多い(今でこそ少なくなったものの)のがオランダならではなのでしょう。


風車の役割としては、粉を挽く、油を搾るといったあたりの「食」に関わる部分が
まず挙げられますけれど、オランダでは国土を広げるために風車が利用されたのですな。


日本でオランダと呼ばれる国はそもそもネーデルラント(Nederland)、
すなわち低い土地であることがその名からも明らかなでして、
その水をかぶりやすい、もっと言えば浅く水の張っている土地で農業をしたり、
住んだりするためには干拓が必要なわけで、排水に使われたのが風車の動力であったと。


左右で水面の高さの違うことにご注目

これは左手が船舶の通る水路であって、中央の堤防より右手の方に
牛の寝そべる牧草地や住居などがある土地が広がっているのですね。


土地を作り出すのに完全に水面よりも高くなるよう嵩上げするのは
ひどく大変なことでしょうから、このくらいで手を打ってと作り出した土地が
オランダの国土だったりするのでありますよ。


今でも国土の1/4程度は海抜0m以下とのこと。
これを知ると、例の「ダッチボーイ」の話に迫真性が増すのではないでしょうか。


逆の話になりますが、スペインからの独立戦争の折、敵軍を寄せ付けないために
わざわざ堤防を決壊させて辺り一面を水浸しにしてしまったという作戦も展開されたとか。
所謂「水攻め」は籠城した側を孤立させるための作戦かと思うところながら、
反対に攻めてくる側を困らせる作戦でもあったのですなあ。


でも、それでは守る側も水浸しの中では困るのではないかと思うと、さにあらず。
喫水の浅い平底舟を滑るように走らせて移動することにオランダ側は長けており、
ちゃあんと自らの利を活かせる作戦でもあったようで。


とまれ、そのようなことからもオランダと風車は切っても切れない関係なわけですが、
さすがに現代においては粉挽き、油搾り、排水などで風車の役割は終わったと言えましょう。
その代わりに別の形で風車は健在でありましたよ。


オランダの現代の風車

昔から風車をあれこれの動力に変えて使っていたくらいに風が得られるお土地柄なれば、
現代の風車もさぞや効果的に活躍しているのではと思うところですが、
現実的には難しいことがたくさんあるようですね。


取り分け国土が狭いとなると、上の写真のように設置できる場所には限りがありましょうし。
ならばいっそ北海の洋上に風車を連ねてと、実際に設置もしているようですけれど、
メンテナンスには船で行かねばならないので大変なようです。


かつてのオランダでは風車が頼りになる動力源というところから、改良に改良を加え、
製材用の風車を作り出したり、はたまた製紙用の風車まで生み出したとか。
それだけに現代の風車にもひと工夫、ふた工夫して行ってくれたりするかもしれませんですね。