秩父に着いて天然酵母パンの軽い昼食 を済ませ、食後の散歩がてらに向かったのは
春先の芝桜で有名な羊山公園でありました。


どのくらい有名かと言いますれば、帰路に乗った西武新宿線のラッピング電車で
車体に描かれたかの「ぐでたま 」が「芝桜見にいくん?」と言っているくらい…
というのは適切な例えかどうかはわかりませんが。


羊山公園おさんぽMAP


とまれ、羊山公園の全体像はこの「おさんぽMAP」のような具合ですが、
芝桜の丘は南北に長い公園内の南側(MAPで言うと左側)にありまして、
シーズンではありませんのでそちらに行ってもしょうがない。
そこで今回向かったのは北側(MAPで言うと右側)の見晴らしの丘なのでありました。


盆地状の秩父市街は、片方をミューズパーク のある丘が、
もう片方をこの羊山公園のある丘が壁のようになって
両側から挟み込んでいるわけですから、当然にして見晴らしの丘へは登りになる。


ですがそんなことはすっかり失念していたものですから、
やおらいかにも山道な登り坂が目の前に現れたときには「あらら…」という気がしたものです。


そんな登り坂を登り始めてすぐのところ、目に入った看板には「牧水の滝」と。
全国各地を旅した若山牧水ですので、秩父にも足を運んだのでありましょう、
何かしらゆかりがあるのですかね。解説板にはこのように。

国民的歌人として知られている旅の歌人若山牧水は、大正九年四月七日、秩父鉄道の秩父駅で下車し、徒歩で妻坂峠を越えて名栗へと向かっている。このとき、牧水は紀行集『渓から渓へ』で「…耳につくのは梭の音である。町はづれの片側町の屋竝から、…殆ど軒別に機を織るその音が起つて居る。男女聲を合せて何やら唄つてゐる家もある。」と記しており、この歌は歌集『くろ土』の「秩父の春」に収録されている。


秩父町出はづれ来れば機をりのうた聲つゞく古りし家並に

まあ、こうしたゆかりを踏まえてこの歌を刻んだ歌碑が立てられ、
また人工の滝も作られて「牧水の滝」と命名されておるような次第。
それにしても小さな滝ですなあ、水はきれいですけどね。


牧水の滝@秩父

若山牧水歌碑@秩父

ところで、秩父を訪ねた牧水の耳についたのが梭の音であったとは。
よほど秩父では織物が盛んであったとみえますね。
確かに牧水の滝への登りにかかるちょいと手前に「ちちぶ銘仙館はこちら」的な
案内板が出ておりましたっけ。


ちなみにちちぶ銘仙館のHPによりますれば、秩父銘仙の起源は
「崇神天皇の御代に知々夫彦命が住民に養蚕と機織の技術を伝えたこと」てな記載が。
まあ、神話と伝承の領域ではありますが、とにかく古くから伝わるということでしょう。
それほどの由緒なれば「ちちぶ銘仙館」にも立ち寄ればよかったとは、

先には立たない後悔でして。


それはともかくゆるりゆるりと登り坂をこなして、羊山公園の尾根筋に到着。
あたりは平たい園地になっておりまして、ここが見晴らしの丘であるかと。
どれどれと景色を眺めやるに縁へと向かうのは必然でありますね。

羊山公園から望む秩父市街


なるほど秩父市街が一望で、向こう側に見えるのが頂上にミューズパークのある丘ですな。
天気が良ければ結構な見晴らしが得られるようながら、この日はどんより曇り空。
そんなお天気が分かっていながら登ってきたのは、

見晴らしの丘自体が目的地ではないからなのでありますよ。


この丘の片隅に資料館がひとつと美術館がひとつ、本当のお目当てはそちらですので、
この後にひとつずつ覗いてみる…とまあ、かような段取りなのでございます。