ちょいと前に、日本の国立公園紹介のために描かれた絵の展覧会 を見に行ったですが、
中部山岳国立公園より西側は後期展で展示ということでしたので、行ってきました、後期展。
なんせ前期展の入場券半券を持参すれば、無料で見られるということでしたし。
出かけた先はもちろん前期展と同じく小金井市立はけの森美術館ですけれど、
前期展のことを書いた折には美術館そのもののことにはあまり触れませんでしたので、
ちと前振りとして補足的に。
写真でも想像のよすがとなりましょうか、
建物の裏に見える鬱蒼とした木立の部分は実は斜面になっておりまして、
昔々に多摩川が川岸を削ってできた崖線に当たっているのですね。
つまり、美術館は崖下にあるのでして、近くには高台を伏流水として流れてきた水が湧き出し、
せせらぎを形成しているような場所でもあるのですなあ。
「国分寺崖線」と言われるこの崖状の地形は遠く世田谷の等々力渓谷まで続いていますが、
この地形をもっぱら「はけ」と呼ぶところから、「はけの森美術館」ということになるわけです。
と、余談はともかく「絵画で国立公園めぐり」の後期展は
中部山岳(北アルプス一帯)から西の国立公園を紹介する絵画が並んでいる。
そこでふと気づいたことには、中国四国地域に国立公園が少ないのう…ということ。
瀬戸内海、大山隠岐、足摺宇和海の3カ所だけです。
もっとも鳥取砂丘を含む山陰海岸国立公園が京都府、兵庫県にも跨っているからか、
地域分けで近畿に区分されたりしていたこともありましょうけれど。
また、瀬戸内海国立公園が淡路島から周防灘までと実に大きなエリアを擁するもので、
これが大きなくくりのひとつと数えられていることもありましょう。
このことから瀬戸内海国立公園を描いた絵の数も多かったですなあ。
藤島武二が屋島を描き、満谷国四郎が櫃石島(今では下津井瀬戸大橋が架る)を描き、
須田国太郎が来島海峡を描くなどといった具合です。
しかしまあ、前期展でも思ったことですけれど、
本来的には国立公園の候補地を国民に紹介するための絵画作品ながら
どれもこれも作家の個性が際立っていて、筆運びはもちろんのこと
そもそも「なぜここ?」という場所選びも単純に国立公園のいちばんいい顔をみせるものとは
必ずしもいえないような。
だもんですから、むしろ単純に絵画作品としてみるべきかとも思うわけでして
前期展のところで一点も画像を紹介することのなかった展示作品の中で
個人的に「おお!」という作品(でポストカードの売っていたもの)を挙げてみるならば坂本繁二郎の「暁明の根子岳」でありましょうなあ。
根子岳というのは阿蘇五岳のひとつとされる熊本の山ですけれど、
坂本繁二郎の手にかかればもはやそれがどこであろうと関わりなく、
個性ある色調が山に特有の湿度を含んだ空気ごしに遠望する風景として
独り立ちしているように思えたものでありますよ。
どこの風景だかは超越してという点では(残念ながら画像はありませんですが)、
田中忠雄描くところの「白水滝」(白山国立公園)もフォーヴィスムに影響されたかと思う
実に大胆な色遣いとタッチが「おお!」と思わせ、間違って行ってみたいとなりそうな。
間違ってと言いますのは、おそらく取材先の白水滝ももちろん絶景ポイントでしょうけれど、
絵で見たものとは違うありようであろうからと思うものですから。
展覧会としては楽しめるものながら、
作品が制作された本来の意図はどれほど汲まれているであろうかな…と
後期展でも改めて思う展覧会なのでありました。