ポスター作家レイモン・サヴィニャックの展覧会を見てきたのですね。

題して「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」、

パリはサヴィニャックの魔法にかかってしまったのですなあ。


「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」展@練馬区立美術館


あれは…(と思いだそうとするよりは昔のブログを検索した方が早いわけですが)

もう6年くらい前ですね、渋谷Bunkamuraのギャラリーでやっていたサヴィニャック展に

ふいと足を止めたのでありました。


そのときはたまたまギャラリートークの時間にあたったものですから

いろいろと面白い話を聞いたですが、そのときには意識されなかったことが

あのカッサンドル との関係なのですね。


1907年生まれのサヴィニャックはカッサンドルの6つ下になりますか、

さほどに遠く離れた年齢差ではありませんけれど、サヴィニャックはカッサンドル作品を見て

「あまりに素晴らしくて、絶望するさえ」すると言ったそうで。


サヴィニャック26歳のときにカッサンドルに出会い、後にアシスタントも務めたと言われますと

なるほど初期作にはカッサンドル色があるなというふうに思えましたですよ。


ただ第二次大戦への従軍した際、自作を振り返って今後を考える時間だけはあったのでしょう、省察の中から独自性へ踏み出すヒントを見つけたようですね。

曰く「装飾性を排し、むだな線の無い、単純明快なデザイン」といった方向へ。


牛のお乳が石鹸になるという「牛乳石鹸モンサヴォン」(1948/50年)の作品で脚光を浴びると、

パリはサヴィニャックの魔法に染まっていくことに。

日本人でも知っているフランスの商品、ブランドの数々がサヴィニャックにポスターを依頼、

例えばマギーブイヨン、ヨープレート、オランジーナ、ダノン、ティファール、ルノーなどなどです。


Bic(ビック)というフランスのボールペンがありますけれど、

今でもキャラクターして使われている「ビックボーイ」(頭がボールペンのボール状)は

サヴィニャックのデザインだったのですなあ。


と、サヴィニャックは大活躍を続けるわけですが、その作品は見た目を引くというばかりでなく、キャッチコピーには言葉遊びの要素が多分に含まれておるようですね。

フランス語に疎い日本人(自分のことですが)には分かりにくいことながら。


それでも分かりやすい例をひとつ挙げますと、

今回展のフライヤーに使われた一枚、ウット毛糸の「ひとりでに編める」でしょうか。

とても編みやすくすいすい編めてしまう毛糸であることを示すのに

ひとりでに編めてしまうくらいと例えて、絵では毛糸が自らを編んでいるところを描いた。

見る者はどうしたってにんまりしてしまうではありませんか。


個人的にはカッサンドルのスタイリッシュな作風の方に惹かれるところはありますけれど、

そのカッサンドルにも「デュボ・デュボン・デュボネ」のようにコミカルな一面はあるも、

カッサンドルが3コマで表現したようなことをサヴィニャックはひとコマでバシッと伝えたかったとか。


そうしたひとコマで見せるというあり方も「言葉」との相乗効果があってこそでもありましょうか。

それがまたパリの人々のウィット、エスプリにヒットしたことでもあろうかと。

サヴィニャックの魔法はどうやら見て読むことでかかってしまうものかもしれませんですね。


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