昔々あるところにふたつの小さな国がありました。

ひろく皇帝が治める土地にはちいさな国があまたありましたが、ふたつの国はおとなりどうし。

ひとつを「善なる王国」といい、もうひとつを「悪なる王国」といいました。


あるとき、「善なる王国」にひとりの少年が迷い込みました。

見つけた者たちには少年の姿が異形に見えたものですから

「悪魔の手先」に違いないと思い込み、殺してしまおうとしたのでした。


ちょうどそこへ「善なる王国」の王様が通りかかって少年を助け、

この国に住まうことを許したのでした。


それからしばらく時を経て、少年は立派な若者に成長しました。

周りの人たちが若者を見る目は相変わらず「悪魔の手先」であるかのようでしたが、

ただひとり王様のひとり娘であるお姫様だけはわけ隔てなく若者に接し、

いつしか互いに心を通わせるようになっていたのでした。


そんなとき「善なる王国」では皇帝の巡察を迎えることになり、

おとなりの「悪なる王国」の王様も招いて祝賀の宴を催すことになりました。


かねて「善なる王国」の繁栄をねたみ、

乗っ取りを画策していた「悪なる王国」の王様は手下の妖術使いに命じ

皇帝が来訪したときを見計らって「善なる王国」の王様に失態を演じさせようとたくらみました。


妖術に操られた「善なる王国」の王様は狂気に陥り、

これを見た皇帝は王様を死刑に処すことにしたのでした。

そして、「善なる王国」は残されたお姫様と「悪なる王国」の王が結婚することによって

引き継がれていこうと宣言したのでした。婚礼は国王の喪があけた一年後とされました。


「善なる王国」の行く末やいかに。そしてお姫様の運命は…。

この窮地を打開すべく「善なる王国」の忠臣たちが、

お姫様に秘めた思いを抱く若者とともにひそかに行動を開始。

しかし、そこかしこに「悪なる王国」の王様は配下を置いて見張らせ、

忠臣たちは武器を集めることもままなりませんでした。


そこで若者は自分が生まれ、逃げ出した土地のことを忠臣たちのリーダーに語り、

山中でどこの国にも属さず独自に生きている部族の存在を知らせるのでした。

助力を得るには試練を乗り越えねばならないがやってみようと、

その土地へとみなを導いていきました。


若者が忠臣のリーダーひとりを連れて、その部族の長に会いに洞窟へと入っていくとき

「ここから先は、何があっても何を見ても剣を抜いてはならない」とリーダーに教えました。

それが乗り越えなければならない試練であるというのです。


ここから先は一人でと若者は奥へ進み、大広間のようなところにリーダーは残されました。

そのとき、追ってきてはいけないと忠告していたにも関わらず、残りの忠臣たちが洞窟に

なだれ込んで来て、これを危機と感じた部族の者たちと剣を抜いての乱闘となってしまいました。


部族の者たちに圧倒される仲間を見て、剣に手をかけるリーダーでしたが、

若者の言葉を思い出して、身を震わせて踏み止まるのでした。

実は部族の長も幻術を使い、剣を抜かない試練を全うできるか試していたのでした。


こうして多くの武器を得ることができた若者と忠臣たち。

お姫様と「悪なる王国」の王様とも婚礼が間近に迫る中、

王国を、そしてお姫様を奪還する大作戦を開始するのでありました…。


長々とおとぎ話風に書いてきましたのは、

これがどこで展開される話なのかをはぐらかすためだったのですが、

実は「47 RONIN」という映画のお話。

タイトルの意は「四十七士」、つまり日本の話だということでありまして…。


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先ほどのおとぎ話を振り返ってみますと、

皇帝=徳川将軍、善なる国の王様=浅野、悪なる国の王様=吉良、

忠臣のリーダーはもちろん大石という名でそれぞれ映画の中に出てきます。


ですが、お姫様への思いを秘めた若者カイ(キアヌ・リーブス!)ほか

新たな登場人物をたくさん配されて、話ももはやオリジナルというべきものですから、

むしろ赤穂浪士に託けたようなタイトルや人物名の採用はやめた方がよかったんでないですかね。


見始めてすぐに「これは……mm」と後悔したですが、

何とか割り切って「これはファンタジーなんだ」、

「ロード・オブ・ザ・リングなんかの類いの舞台を東洋に持ってきたんだ」と思い込むことで

何とか見終えたですが、先にも言ったような似非赤穂浪士路線は捨てて、

舞台設定から何からとことん架空のファンタジーに徹した方がよかったのではなかろうかと。


そういう受け止め方をした映画なんですが、これが個人的な想像をよそに

思いがけずも高評価を与えるレビューがあるのですな。

おそらくはファンタジーと疑わずに見る見方をすれば、そうなるのかもしれません。

が、しかし…。


ここに日本のサムライの魂がある…みたいな紹介が話の前後にくっついてしまっては、

「これが日本なんだ」とは思わずとも、「これがかつての日本なんだ」とは思ってしまうかも。

それがフジヤマ、ゲイシャ、ハラキリよりもさらに仰天の世界として描かれては

やはり喜べませんし、素直に楽しむことさえできないなあと、個人的には。


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