昨今は昔の映画がリメイクされることしばしの感ありですが、
ふと思ったこととしてはかつてのハリウッド超大作をリメイクしたら
いったいどういうふうになろうものかな…と。
そんな折も折、リドリー・スコットが監督した映画「エクソダス」を見ることに。
要するにモーゼに率いられたユダヤの民がエジプトを逃れるというお話は
往年のハリウッド大作「十戒」(1956年)のリメイクと言っていいでしょうかね。
上映時間150分が短いとはいいませんけれど、
旧作が220分という長尺なだけに些か小粒になったところはありましょうか。
それでも、長さの違いは1956年当時には考えもしなかった技術でもって
見る者を圧倒するような映像が展開することでカバーもされようし…と思い、
先にハリウッド超大作をリメイクしたらどうなろうかと思ったのは
その辺りの技術進歩を使ってどう表現されようかという興味でもあったわけで。
ところが、そうした思いとは裏腹に見終わってみれば
「十戒」の方が面白かったかもと思えるような。
確かに、ユダヤ人に対する仕打ちを改めないエジプトに災厄がもたらされるあたり、
進歩した技術を使ってこそではあったと思いますが、
虫やらカエルやらが群がって襲来するさまはただ単に気持ち悪さが増しただけのような。
こうしたことは単純にリアルさを追求するのがいいのかどうかという問題ですね。
人間には想像力がありますから、「まんま」を見せなくとも怖さなりを引き出すことは
可能なはずですが、それを「まんま」見せる方向にもっていける技術ができたからといって
表現をどうするかは別問題のはずなんですが。
逆に技術が進んだ点と思えることから
どうしても迫真性の向上に期待(?)を寄せてしまうのが紅海の渡るシーンでしょうかね。
モーゼが天の力を得て、海を真っ二つに割ってしまうという「十戒」の有名なシーンです。
されど、ここでも先ほどの部分とはまた違った意味でリアルさを求めたものか、
さすがに海が真っ二つに割れて、あたかも立山黒部アルペンルートの「雪の大谷」のように
海の壁がそそり立って道ができる…とはあり得ないでしょうと考えたのかも(?)。
以前見たドキュメンタリーで紅海を歩いて渡り越えるといったことが実際に可能なのかを
検討していたですが、それによると「ウィンドセットダウン」という気象現象に出くわせば
可能性としては無いとは言えないという話なのですな。
もっとも映画「十戒」で描かれたように海の壁がそそり立つのではなくして、
風と潮流がかみあってしかも元より浅いところであれば、
人が歩いて渡れるくらいの水位になることはあり得るということでして。
そうか、可能性ありならむしろその方がリアルに近いと
リドリー・スコットが考えたかどうかは分かりませんけれど、
「エクソダス」での渡海シーンはモーゼの神がかりというよりは
なんか天候の関係か、偶然渡れてしまいました…的な感じになっておりましたなあ。
それから、これは忘れてしまったのか、はっきり語るには自信の無いところですが、
「十戒」の石板というのはモーゼが自分で文字を刻むんでしたですかね。
神より託されたものとして元から十の戒めが刻んであったのでなくって…。
これもまたリアルさを求めたのでしょうかね。
いくら神の言葉でも予め石板に刻まれているのは妙だから、
神の声を聞いたモーゼが刻みつけることにしようというようなことでしょうか。
と、何やらケチつけまくりになっていますけれど、
これはリメイクにあたって旧作とは違う個性を持つ映画にしようと考えた結果、
(リメイク作品を作ろうというときにとても重要な点ではありますが)
その表現はどうも見る側にはぴんと来ないものになってしまったということかも。
往々にしてリメイク作品は有名作、ヒット作をもとに作られて、
商業的には当然の発想かもしれませんですが、
リメイクを作る側であったならばむしろ過去の失敗作に目を付けて
「こんな映画に仕立て直したけど、どうよ!」というのもありなのではと思いましたですよ。