いやはやどうした塩梅でありましょうや、撮って来た写真をPCに取り込む際に
SDカードの中の一部しか画像として認識しないようでしたので、
再読み込みをしてみるとデータは全て消失しておりました。
機械の機嫌が悪いあろうこともないのでしょうけれど、
そんなふうにでも考えないとすとんと落ちないと言いますか。
ということで、写真付きでご披露申し上げんと思っていたものの叶わなくなったのは
東京・小平市にある「ブリヂストンTODAY」、ゴムとタイヤの博物館のお話なのでありますよ。
要するに企業博物館ですので、宣伝まじりであることは承知の上とすれば、
そこらはそれなりに受け止めるとしても、わりと面白かったなあと。
当然のように「ブリヂストンの歴史」なんつうことから展示が始まるわけですが、
創業者が石橋さんでその名前を直訳した「ストーン」「ブリッジ」をひっくり返して社名になった。
これは今さら紹介するのもおこがましい有名な話ですけれど、
初期のころには「ブリッヂストン」と「ッ」の字が入っていたのですなあ。
それを後に「ブリヂストン」としたのは英断であったと思いますですよ。
ところで、創業者の出た石橋家は仕立物屋であったそうですな。
それを近代化の波を見通したか、足袋の専業に転じ、後には株式会社化もする。
正二郎の手腕でもあったようです。
この日本足袋株式会社のタイヤ部門がやがて世界一のタイヤメーカーになるとは、
「陸王」のこはぜ屋さんもびっくりではありますまいか。
ちなみに余談ながら「陸王」ならぬ「力王」のブランド名で有名な地下足袋。
その考案者は石橋正二郎であると、Wikipediaに紹介されておりますねえ。
そんなところからスタートしたブリヂストンは
モータリゼーション(この言葉自体、ノスタルジックでもありますが)の高まりとともに
「どこま~でも行こう」というCMに乗せてブランドイメージを作り上げていくことに。
(館内のビデオライブラリーでは、1960年代以降の数々のCMを見ることができます)
とまあ、そんな宣伝混じりの展示とは別に
「タイヤの基礎知識」とか「タイヤができるまで」とかいった解説もあるわけで。
ご存知の方には何でもないことでしょうけれど、「タイヤが黒いのはなぜ?」とあったときに
誰かが黒い製品を作ったのが定着したのだろうか…なんつう想像もしてしまいましたですよ。
ですが、タイヤが黒いのは「必然」だったのですなあ。
タイヤの素材となる天然ゴムはゴムの木からとれますけれど、
そのままでは弾力性などの点で弱すぎるようでして、これに硫黄を加えると強度が増すそうな。
「加硫」というこの反応を発見したのがチャールズ・グッドイヤーという人、
アメリカのタイヤメーカーにその名が残っておりますな(本人と会社は関係無いようですが)。
と、この過程を経た加硫ゴムはいかにもゴムゴムした色で、
分かりやすくは(正二郎考案の)地下足袋の底を思い浮かべればよろしいかと。
といっても、地下足袋自体を思い浮かべようのない方々もおいででしょうから、
輪ゴムの色といった方が断然分かりやすいですね(笑)。
とまれ、原料段階よりも強くなった加硫ゴムではありますが、
タイヤのように大きな重量を支え、それがつねに地面との摩擦にさらされるにはまだまだ弱い。で、加硫ゴムにさらにカーボンブラックを加えることでさらにさらに強くなることが判明、
タイヤ製造にはこの方法が取り入れられたので「タイヤは黒い」ということなのだそうでありますよ。
そのほかの展示としては、モータースポーツへの参画を紹介するコーナーには
レーシングドライバー佐藤琢磨がインディ500で優勝したときの車が展示されていて
つるっつるになったタイヤに「ほお~」と思ったり、免振ゴム見学コーナーでは
こういう仕組みが国立西洋美術館にも施されたんだねと思ったり。
受付では入館、退館の時刻を記すことになっておりますけれど、
前後して入館したどの人たちよりも長居をしてしまった「ブリヂストンTODAY」でありました。
