中学のときに吹奏楽を始めて以来、

吹奏楽にクラシックからのアレンジものの曲が多くあったこともあって

クラシック音楽の曲をとにかく何でも聴いてやろうと思ったのでありますね。


当時は、今のようにyoutubeであれこれの曲を引き出せるなんつうことがありませんから、

頼りの一番はFM放送であり、レコードのレンタル(買うのは小遣い的に厳選せねばですので)。

レンタル・レコード店というのがちょうど出たてでもあった(黎紅堂でしたかね…)頃ですが、

こういうお店(その後のTSUTAYAなどもそうですが)にはポピュラー系の音楽はずらりと

並んでいるものの、クラシック音楽はさほどでもなし。


そこでもっとも重宝に利用させてもらったのが京区立小石川図書館のレコードコーナー、

かなりの充実していましたし、自宅と大学との通学経路上にあったものですから。

しかし、どうして文京区在住、在勤、在学のいずれでもない者が利用カードを作れたのか、

今では思い出せません(前に触れたように東大 正門前でバイトしてたからかも…?)。


それはともかく、バロック以前から現代音楽までの

聴いた事がないと思しき曲の入ったLPをせっせと借りて帰って聴きまくる。


すると「これも音楽?!」というびっくりものに遭遇したり、

あるいは宝物を発見したような気にもなる曲に出会ったりとさまざまでしたけれど、

そんな未知なる曲との出会いは重い思いをしてLPレコードを持ち帰ってこそ味わえたわけで、

苦労の甲斐があると思えたことではあったわけです。


そんな知らない作品に出くわすというお楽しみ、今また別の分野で展開しつつあるというか。

その別の分野のひとつというのが歌舞伎なのでありますよ。


と、いつもに増して長い前置きになってますが、

またまた国立劇場 へと出向いていって「毛抜」を見て参ったような次第でありまして。


平成29年6月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎十八番の内 毛抜」@国立劇場大劇場


お馴染みさんでなくとも歌舞伎に親しんでもらおうという国立劇場の
「歌舞伎鑑賞教室」。

その名のとおりに大劇場の中は制服、私服の高校生の団体に埋め尽くされんばかりで、

開演前などは体育館での全体集会の始まる前状態のざわざわ感…とは、昨年の同企画で

魚屋宗五郎 」を見たときと同じなんですが、すっかり忘れておりました。


まあ、始まってしまえば静かに見ている(もちろん中には完全に飽きてるのもいる)学生たち、

ほっとはしましたけれど。


とまれ今年の演目が「毛抜」とあって、これが「歌舞伎十八番の内」ということでもありますし、

冒頭のレコードの話ではありませんが、見たことのない作品をどんどん見てやろうというときに

常公演より安めの入場料に釣られて出かけていったという次第でありますよ。


例によって予備知識無しで臨んだわけですが、勘違いが正されるというのは収穫でありますね。

「歌舞伎十八番」てなふうに聞きますと、「荒事」と言われる豪壮な芝居を(素人としては)

つい思い浮かべてしまうところでして、この「毛抜」も解説にこんな記載がありました。

…これらの見得や、弾正が槍で天井を突く場面で発する「やっとことっちゃ、うんとこな」という特徴的な掛け声と力強い動作などは、力の魅力を表現し、「荒事」と呼ばれます。

そうであるか…と思わなくはないものの、芝居としてはどうもコミカルなものでありまして。

お姫様に奇病を引き起こす原因を持ち前の機転で解き明かす粂寺弾正(中村錦之助)は

切れ者ではありましょうけれど、美貌の若侍や腰元にすぐにちょっかいを出しては

跳ね付けらという役回り。しかも、客席に向かって「面目ない」と頭を下げて笑いをとったりも。


だいたいお姫様の奇病というのが、

髪の毛がおっそろしく逆立ってしまうというのが症状で、これはこれで苦笑するしかないような。ただ、歌舞伎というのものが今でこそ少々身なりを気にして歌舞伎座へ…てなことになってますが、

当時は大衆娯楽の最前線だったことに改めて思うには打ってつけの作品とも言えそうですね。


ところで、この「歌舞伎鑑賞教室」のお決まりとして、

公演の前に30分ほど「歌舞伎のみかた」という解説を出演者のひとりがやるんですね。

ここで場内の廻り舞台や各種のセリの上げ下げを見せたりするのに加えて、

役者の動きの様式を見せたりするんですが、今回は毛振りを見せていました。


歌舞伎の「毛振り 」に関してはちょいと前にああだこうだと言いましたですが、

あの毛振り用の鬘は何とまあ4~5㎏もあるのだと聞けば、いささか印象も変わるような。

それほどの重さのあるものをかぶって頭を振り続けるとは、実に実にご苦労さんなことで…。


ちなみに(解説の受け売りですが)毛振りの鬘は、

チベットなどに生息するヤクの毛でもって作られているのだそうな。

そのヤクが絶滅危惧状態にあることから、毛振りの鬘は

役者の間で大事に使い回されているそうでありますよ。


とまあ、かような小ネタの仕入れにもつながる「歌舞伎鑑賞教室」で、

「歌舞伎十八番」もいろいろであるなと思ったりしたのでありました。


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