以前、カナダの大陸横断鉄道 を取り上げた回を見て
なんだかんだとお話しました紀行番組「世界の車窓から」のロングバージョン。
このほどまた何となく見ておりましたのはオーストラリア編でありました。
オーストラリア にも大陸横断鉄道が走っていて、
太平洋岸のシドニーとインド洋に面する西オーストラリアのパースとを結んでいることから
「インディアンパシフィック」と呼ばれているのはよく知られたことでありますね。
4,500kmほどを走るカナダに比べ、4,000km弱のオーストラリアのインディアンパシフィックは
全体の距離こそやや短いものの、世界一長い直線区間があるだけに列車の疾走感は
より感じられるようにも思われます。
その長い長い直線区間は何とまあ478kmもあるというのですけれど、
ちなみに日本で最も長い直線区間は北海道の室蘭本線にある28.7kmだそうですから、
桁違いの話でありますなあ。
と、ここでさらにインディアンパシフィックの話が続くのではなくしてですね、それというのも
これまで触れたようなインディアンパシフィックの話は知っている人も多いでしょうから、
オーストラリアの大陸横断鉄道でなくて大陸縦断鉄道の方の話になるですよ。
南岸のアデレードから北岸のダーウィンまで、
オーストラリア大陸のほぼ中央を走り抜ける列車がありまして、
「ザ・ガン」と呼ばれておりますな。
以前から「ザ・ガン」と呼ばれる列車が走っていることは聞き及んでおったですが、
「ザ・ガン」とのネーミングの由来やいかに?と思ったところ、
ちゃあんと番組の中で説明してくれておりましたですよ。
元来「ザ・アフガン・エクスプレス」と呼ばれていたものが短縮されて「ザ・ガン」と。
されど、オーストラリアでアフガンとはこれにいかに?ではありませんか。
これはオーストラリアがイギリスの植民地だったことと関係がありそうですな。
植民といっても最初は沿岸部だけであって、何しろ中央部には大きな砂漠が
横たわっておるわけで。
ですが、そんな砂漠にも入り込んでいく冒険家たちが出て来る。
金に飽かせて大名旅行とまではいいませんが、当然に従者を連れた旅になるわけでして、
その従者というのがアフガン人のラクダ使いであったのだそうな。
砂漠に強いラクダだけでなく、その使い手のアフガン人まで連れてきてしまったのですな。
言うまでもなくかつてはアフガニスタンもまたイギリスの植民地だったですし。
つまりは「ザ・ガン」の砂漠を貫くルートというのは、
アフガン人のラクダ使いと共に通り抜けたトレイルでもありましょうか、
そこから「ザ・アフガン・エクスプレス」の呼び名が生まれた…ということに。
ちなみに番組では「ザ・ガン」の運転士のようすを映し出してもいたですが、
この運転士さんが運転台の脇にあるボタンをちょこちょこと小まめに押している。
で、当然に「このボタンは何ぞ?」という疑問が呈せられることになりまして、
答えは「居眠り防止用のボタン」というのでありますよ。
砂漠の中を駆け抜ける列車の運転は、
その単調な景色の故についつい居眠りが誘発される…てなこともあったのでしょう。
そうしたことを避けるために運転士は1分以内に一度、
そのボタン押しを繰り返していかねばならんことになっており、
押し忘れがあると列車は自動的に止まるようになっているのだとか。
全区間走破の所要時間は54時間。
もちろんその中には停車している時間も含まれておりましょうけれど、
それにしても1分以内に一度のボタンを忘れてはならんとは、反って気が散るような気も。
とまれ、日本の鉄道のような過密ダイヤとは
全く異なる運行状況にあるオーストラリアの鉄道ではありますが、
それぞれに工夫をしながら旅の安全を図っておるのですなあ。
