映画といえば「東宝チャンピオンまつり」か「東映まんがまつり」だと
思っている小学生がいたのですな。
ややあって少しばかり成長すると「もう、怪獣映画でもないか…」と思うようになり、
結果、映画館からは遠ざかることに。
そんなところへ友だちから「映画を見に行かないか」と声が掛かる。
それまで外国の映画におよそ接することが無かったものですから、
どんな映画なのかとかそういったことは全く知らずに
未だ覗いたことのない世界はどんなものかいね?くらいの興味で二つ返事。
やってきたのは新宿歌舞伎町でありました。
新宿という、隅田川の向こうに住まっている子供にとっては完全に行動半径外の町に来て
「ここが新宿かぁ」と。そして「ここが歌舞伎町かぁ」と。
その歌舞伎町の一角に、かつて新宿プラザ劇場という大きな映画館がありました。
大きなといってもいわゆるシネコンとしての大きさではなくして、
巨大スクリーンを誇る単館という意味ですけれど。
当時としては横長ワイドのスクリーンは特別なもので、
四角に納まりきらない関係か?スクリーンの左右両サイドは内向きに湾曲していたような。
「ほお、これが映画館かぁ!」とそれまでに入った「町の映画館」との余りの違いに
びっくりさせられたものでありました。
と、その巨大で素敵な映画館で見た映画、それが「パピヨン」。
当時はスティーヴ・マックィーンもダスティン・ホフマンも知らないままに見たわけですが、
お初で臨む映画としてはスケール、長さ、そしてストーリーも全てに魅了されたのですなあ。
当時、映画は当然に映画館で見るか、TV放送(日本語吹替が基本でしたな)で見るか、
それ以外に手立ては無かったわけですが、「パピヨン」を見て以来、とにかく映画が見たい。
子供が映画館でたくさんの作品を見るお小遣いがあるはずも無く、TVで見られるものは
とにかく何でも見たですね。ですから、B級的なレアな映画も結構見ておりますよ。
今では映画を見る手段はいくらでもありますから、
何を見るかを選び出すのに苦労するくらいになっているのは隔世の感ありですけれど、
そんな手段のひとつ、CS放送でかの映画「パピヨン」が放送されたものですから、
何十年かぶりで見てみたのでありますよ。
その後に膨大な数の映画を見ていて、
中にはすっかり見たことさえ忘れているものもある中で「我ながらよく覚えておるなあ」と。
それこそ最初から最後まで全部とは言いませんけれど、こんなシーンあったっけ?は一度もなく。
絶海の孤島にあう収容所からの脱獄というアクション映画っぽさを醸しつつ、
その実いちばん印象的なのは空の、海の青が大きなスクリーンいっぱいに映し出されるところ。
そして、パピヨン(スティーヴ・マックィーン)とドガ(ダスティン・ホフマン)の友情物語。
世に言う名作として語り継がれるといったほどの作品ではないのかもしれませんですが、
子供がそのスケールに圧倒されていっぺんに映画好きになってしまったという
ただそれだけの映画ではなかったと改めて感じ入ったのでありました。
ですが、今回TVで見ていて決定的に違ったことがひとつ。音響ですね。
ホームシアターのような設備で見ていれば映画館と遜色ないところまでいけるのかもですが、
普通にTVを見ている感覚ではさほどに大きな音量にはしませんから、どうしてももの物足りない。
特にこの映画は、映画そのものが何度も繰り返し見られるわけではない時代でしたから、
早速に買ったサウンドトラックLPで音楽を何度も何度も聴いていたものですから尚のことです。
もちろん映像の広がりもそうですし、やっぱり映画館で見たい映画はあるなと今さらながらに。
一方逆に、映画館で見なくてもいいやという映画が増えたことも確かだとは思うのですよね。
映画に求められる映画らしさは、時に応じて変わるものと思いますが、
映画館でこそ見たい、そんな映画がたくさん作られるといいなあと。
最近足が遠のいているものですから・・・。

