些か徒労に終わったシュロスベルク
を後にフライブルクの旧市街へと歩を進め、
その中心にあたる大聖堂広場(Münsterplatz)にやってきました。
なんだかがらんとしておりますけれど、いつもは市が立って賑やかなはずなんですが、
ちょうど日曜日はお休みということでこんな具合。
ちらほらと観光客がいるばかりです。
と、そんな大聖堂広場に面してひとつ、
「Historisches Kaufhaus」と呼ばれる派手な建物がありまして、
日本のガイドブックなどでは単に「商館」ともされているようですけれど、
16世紀に建てられたものであることもあり、「歴史的(historisches)」とされているのでしょう。
ちなみに掲揚されている旗のうち、一番手前にある白地に赤十字は
「なぜここにイングランドの旗が?」とも思うところながら、実はフライブルクの旗でありまして、
交通の要衝たる十字路を表しているようでありますよ。
実際、1770年、フランスへの輿入れに際してマリー・アントワネットの一行は
ここフライブルクを帝国最後の立ち寄り地点としたあと、ライン川を越えてフランスへと
帰らぬ旅路についた…そんな場所でもあるようです。
それもフライブルクが神聖ローマ帝国との縁が深い町だからなのでしょうね。
かの商館にも「双頭の鷲」の紋章が見えますし、ファサードを飾る4人の像は左から
皇帝マキシミリアン1世、その息子フィリップ端麗公(女王フアナ
の結婚相手ですな)、
皇帝カール5世、皇帝フェルディナント1世とハプスブルク家の人物たちであるそうな。
と、今いるのは大聖堂広場だものですから
当然に目の前はフライブルク大聖堂であって、高い塔が聳えているのですな。
先に訪ねたシュロスベルクで満足な展望が得られずじまいだったことから、
例によって暑さも相俟ってへとへと状態ながらも、塔の上に登っちゃいますかという次第。
下から見上げると尚のこと高さが強調されて、少々の迷いが生じたものの、
聖堂外側の壁面に設けられた(なんだかちゃちな)入り口から「ええい」と登り始めたのでありました。
螺旋階段をぐるぐるぐるぐると一気に登って行き、
途中でひと息付きながらも外を眺めやれば「おお、登ってきた、登ってきた!」とはずみもつく。
登り詰めて展望をと思えば、
真っ先に目に付いてしまったのはシュロスベルクで施錠されていた展望台。
さすがにあの高さに叶うはずもなく…と思うと、がっかり感が甦ってくるような。
気を取り直して、目を転ずると山裾に広がる町がよく見える。
ちょいと高さが抜け出しているのはシュヴァーベン門というものでして、
かつてチロルの方から岩塩を他の地方へ流すという交易で稼いだシュヴァーベン地方の商人が
建てたものであるということです。いかにも交通の要衝らしい建物となりましょうか。
山側と反対の方向はずずっと平地が続き、やがてはラインを越えてフランスに至る。
旧市街らしい三角屋根はほんの手前側だけですので、ここでも町の小ささを感じるところかと。
とまあ、かように何とかフライブルクの眺望をものにできたものですから、
えっちら螺旋階段を下った後はいよいよフライブルク大聖堂の中へと入ってみることにいたします。